抄録
【目的】当院は地域リハビリテーション広域支援センターに指定され、平成18年度より福井県介護予防・リハビリ推進人材養成事業として丹南圏域での介護予防サービス事業者研修会(以下、研修会)を開催している.研修会直後のアンケート調査(有効回答52名、回収率81.3%)では「良い」と評価を得たが、現場での活用実態の把握は不十分であった.そこで、郵送によるアンケート調査を行い、現場の活用状況が明らかになったので報告する.
【対象と方法】平成19年度研修会(リスク管理、身体機能のアセスメントや運動プログラムの立案方法、個別サービス計画書の作成、施設での取り組み紹介や運動実技の実践)への参加者総数64名の内、郵送先が特定可能な54名を対象とし、研修終了3~6ヶ月後に質問紙法による現場での活用に関するアンケート調査を実施した.また、研修会参加者及び施設長宛てに本研究に対する依頼文を同封し、同意を得たものが無記名で返送された.調査内容はアセスメント、プログラム立案、運動実技の実践の3項目に対し、各々現場で活用(76%以上)、一部活用(25~75%)、参考程度(24%以下)、非実践(0%)を選択.なお、活用度を示す%指数は参加者の主観とした.また、参考程度や非実践を選択した場合はその理由を複数回答とした.
【結果】アンケート調査への有効回答は51名(回収率94.4%)であった.上述のプログラム構成3項目と活用頻度4分類をカイ二乗検定した結果、有意な差を認めなかった(p=0.44).活用頻度4分類を%表記でみると、その中で最も高いのは運動実技の実践での一部活用51.0%、次いで、アセスメントの参考程度43.1%、プログラム立案の一部活用41.2%であった.また、参考程度や非実践では全ての項目で業務上を理由とし、具体的には時間や施設設備等の物理的要因(55~78%)が、個人や集団の人的要因(22~45%)よりも多い傾向がみられた.
【考察】我々は研修会を企画するにあたり、アセスメント、プログラム立案、運動実技の実践の順によるボトムアップ方式が重要であると考えた.しかし、アンケート調査の結果ではプログラム構成3項目間での活用頻度に差はなく、参加者の立場からは現場ですぐに使える具体的な運動実技を伝えるトップダウン方式が受け入れやすく、アセスメントについては比較的理解されているか、重要視していなかったと推察できる.また、参考程度や非実践には業務時間や施設設備等の物理的要因への対応が必要と分析できる.尾崎らは、地域での取り組みはどの施設も業務が忙しく、ある程度研修内容が理解できても、利用者と個別に関わることが困難で、こうした状況をふまえた指導内容の検討を指摘している.今後は、物理的な要因に制限をきたす環境下でも容易に運動実技の実践ができる手法を多く取り入れた研修会が求められていると考える.