理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-182
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生活環境支援系理学療法
体幹機能に着目した金属支柱付き短下肢装具の装着方法に関する研究
西ノ園 龍太郎辛嶋 美佳梅野 裕昭佐藤 浩二衛藤 宏
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抄録
【はじめに】
昨年の本学会にて、CVA患者における金属支柱付き短下肢装具装着自立の阻害因子については、麻痺側足を靴中に入れる手順が困難であり、この手順の自立に向けては麻痺側臀部挙上可能な程度の体幹機能獲得が必要であることを述べた.体幹機能は端座位動作の実用性を高める重要な因子となることは周知の通りであるが、今回、装具装着自立の視点から体幹機能を検証した.
【対象】
金属支柱付き短下肢装具を作製したCVA患者の内、端座位にて麻痺側臀部挙上可能な者、かつ下肢Br.Stageが3、高次脳機能障害と股関節ROM制限を認めない者の15名であり、性別は男性11名・女性4名、疾患別は脳梗塞11名・脳出血4名、麻痺側別は右7名・左8名である.
【方法】
対象者の装具作製から2ヶ月後に、麻痺側足を靴中に入れる手順が自立している者(自立群)と介助を要す者(介助群)に分け、以下の体幹機能について比較検討した.1.NTPstage、2.端座位での前方、非麻痺側、麻痺側へのリーチ平均距離(cm)、3.下肢を介助にて挙上時(両側下肢同時、非麻痺側下肢のみ、麻痺側下肢のみ)の端座位保持の可・不可、4.端座位にて体幹前傾位、後傾位での麻痺側、非麻痺側の臀部挙上の可・不可、5.端座位での前方、後方への臀部移動の可・不可、とした.
【結果】
自立群は9名、介助群は6名であった.体幹機能の比較検討では、統計上、2.の前方へのリーチ距離(自立群:34.2±7.2cm、介助群:24.3±10.1cm)、麻痺側へのリーチ距離(自立群:20.6±5.1cm、介助群:12.8±3.0cm)、5.の後方への臀部移動(自立群:可7名、不可2名、介助群:可1名、不可5名)において有意差を認めた.その他の項目については有意差を認めなかった.
【考察】
結果より、装具装着自立に向けては、麻痺側臀部挙上に加え、麻痺側への重心移動や骨盤の引き上げ、骨盤後退機能が重要な因子であることが分かった.このことをふまえると、装具装着には下肢の随意的な動きを利用するのではなく、端座位での重心移動やバランス反応、体幹の代償運動など骨盤と体幹の機能を有効活用することが装具装着の能力を向上させることに繋がると考える.すなわち、装具装着自立に向けた具体的な関わりとしては、体幹の支持性を獲得すると共に、端座位にて臀部挙上や非麻痺側及び麻痺側下肢の意図的な操作を可能にする体幹と骨盤の協調的かつ選択的な運動が重要であると考えられた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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