抄録
【目的】
平成18年度より介護予防事業が全国で実施されているが、特定高齢者施策の課題として、対象となる特定高齢者の選定数が少ない、介護予防事業の参加につながらない、事業終了後の対応などの課題が挙げられている.運動器の機能向上事業においては、3ヶ月、6ヶ月の事業結果が報告されているが、その身体機能の効果の特徴についての検証が必要である.今回、運動器の機能向上事業参加者の6ヶ月間の効果と1年間継続者を対象に継続的な評価を行い、その結果より虚弱高齢者の身体機能の向上に関する特徴と介護予防事業のあり方を考察する.
【対象と方法】
対象は平成18年4月~平成20年6月までに運動器の機能向上事業に参加し、問診および体力評価を事業実施前後に評価し得た、男性 14名、女性 82名の計 96名とした.年齢は、平均78.7±6.0歳である.評価は、問診として転倒アセスメント(鈴木ら)、老研式活動能力指標(老研式)、GDS-15を開始時と終了時に実施した.体力評価は、握力、開眼片脚起立時間、椅子起立時間、Timed Up & Go test(TUG)を各2回測定し、良い方の値を有効値とし、開始時、3ヶ月後、終了時の3回実施した.運動プログラムは週1回、90分程度とし、体力測定の結果に基づき、参加者個々のプログラムを立案した.内容は体操を中心としたストレッチ、筋力トレーニング、バランス運動などから構成した.評価項目の分析は開始時と終了時の比較をwilcoxonの符号付順位検定および対応のあるT検定を用いて検討した.1年間の評価項目の変化については、1年間実施した36名(男性 5名、女性 31名、平均年齢77.9±5.6歳)を対象に一元配置分散分析を用い、多重比較にて経時的な変化を検討した.なお、事業参加に際しては参加者の同意を得て実施している.
【結果】
1)6ヶ月後の効果:問診において老研式と転倒アセスメントにおいて有意な改善がみられたが、GDS-15では有意差はみられなかった.体力評価では、左握力、開眼片脚起立時間、椅子起立時間、TUGにおいて有意な改善が認められた.
2)1年間の経時的変化:問診においては老研式と転倒アセスメントで、開始時とと6ヶ月後、1年後において有意差が認められた.GDS-15では有意差はみられなかったものの1年後に向上する傾向が伺われた.体力評価では、開眼片脚起立時間、椅子起立時間、TUGで開始時と3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年後において有意差がみられた.
【考察】
運動器の機能向上事業参加者の6ヶ月後の変化は、体力評価の項目および問診で有意な改善がみられ、身体機能の向上とともにADL面に対する効果も見受けられ、有効性が示された.1年間継続者の変化では、体力評価では3ヶ月後、問診では6ヶ月後に有意差がみられ、比較的早期に介入効果が得られるものと推察された.運動器の機能向上事業は、対象者に即した個別プログラムの実施とともに事業終了後の継続した対応が重要となる.