理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-201
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生活環境支援系理学療法
健康高齢者の生活の質および日常生活活動を反映する最大歩行速度測定条件
―歩行距離および補助路の有無についての検討―
羽崎 完峯松 亮原納 明博岡本 希車谷 典男
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抄録
【緒言】歩行は生活の質(QOL)や日常生活活動(ADL)の重要な要素であり,様々な測定・分析方法がある.それらの中でも,最も広く取り上げられている尺度は最大歩行速度である.その測定は一般的に,5mあるいは10mの距離を歩行させることが多い.しかし,どちらの距離での測定が,より正確にQOLやADLを反映しているかは明確にされていない.また近年,歩行の定常状態をみる目的で補助路を設けた測定が提唱されているが,その必要性の検討は十分ではない.そこで今回,健康高齢者のQOLおよびADLをより正確に反映する歩行速度計測条件を明確にする目的で,5mと10mの距離を補助路のある場合とない場合の4つの設定での最大歩行速度とQOLおよびADLの関係を検討した.【対象と方法】奈良県内に在住する65歳以上の高齢者を対象とした「健康関連QOLをアウトカムとした地域高齢者のコホ-ト研究」の調査に参加した3,547名のうち,無作為に選択した528名(平均年齢72.3±5.3歳,男性275名,女性253名)を対象とした.なお,すべての対象者から,文書にて本調査に対する理解と協力の同意を得た.最大歩行速度の測定は,屋内の5mおよび10mの直線コ-スを2mの補助路を設けた場合と設けない場合の4条件で,測定を2回ずつ行い,それぞれの所要時間から歩行速度を算出し,それらの平均値を求めた.所要時間の測定は,赤外線センサ-と連動するタイマ-(竹井機器工業社製2CHディスプレ-タイマ-)により行った.QOLは,SF-36の下位尺度「身体機能」および「身体的健康サマリ-」を分析対象とした.ADLは,機能的自立度評価法(FIM)の運動項目のうち「移動」を分析対象とした.QOLおよびADLと最大歩行速度の関係は,Spearmanの順位相関係数を算出して検討した.さらに,複数個の相関係数の同等性の検定を行い,相関の強さの差を検討した.【結果と考察】SF-36の「身体機能」と最大歩行速度の間には,5m補助路ありでr=0.40,10m補助路ありでr=0.41,5m補助路なしでr=0.43,10m補助路なしでr=0.43と有意な相関が認められた(p<0.01).「身体的健康サマリ-」との間には,5m補助路ありでr=0.31,10m補助路ありでr=0.32,5m補助路なしでr=0.32,10m補助路なしでr=0.32と有意に弱い相関が認められた(p<0.01).FIMの「移動」との間にも,5m補助路ありでr=0.38,10m補助路ありでr=0.37,5m補助路なしでr=0.36,10m補助路なしでr=0.37と有意に弱い相関が認められた(p<0.01).それぞれの関係において複数個の相関係数の同等性の検定を行った結果,相関係数に差はなかった.これらのことから,QOLおよびADLとの関係において,4条件のうちいずれを選択しても差がなく,同等の関係の強さを示すことが分かった.しかし,今回は人為的な測定誤差を避けるため赤外線センサ-を用いたが,ストップウォッチを使用する場合は,設定条件を吟味する必要があると考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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