抄録
【目的】
人工呼吸器等の発達により、神経筋疾患患者の在宅療養が可能となっている.その中で、呼吸理学療法等が必要であり、理学療法士の介入は長期的に必要であると考えられる.しかし、神経筋疾患患者の中には進行性疾患の為、リハビリテーションは必要ないとの説明を受けている患者も少なくない.今回の患者もリハビリテーションは必要ないとの説明を受け、人工呼吸器管理開始より1年が経過するまで、リハビリテーション関連職種の介入が行われておらず、看護師により呼吸理学療法が行われていた.そこに、患者、家族の希望から理学療法士の介入が開始され、さらに家族の希望により、理学療法士の訪問が1日2回行われるようになった後には、呼吸理学療法は理学療法士を中心に行われることとなった.
よって今回、長期間介入を行った筋萎縮性側索硬化症患者のspo2に着目し、介入による変化を追うこととした.
【方法】
対象:在宅療養中の筋萎縮性側索症患者1名(49歳 男性 平成14年4月より人工呼吸器管理中)対象には発表の主旨を説明し、同意を得た.
対象に対しての介入は、以下4パターンに分類された.
1、平成14年11月から平成15年5月まで、週4回看護師が訪問.(午前)
2、平成15年6月から平成16年4月まで、週5回看護師が訪問(午前).
3、平成16年5月から平成17年7月5日まで、週5回看護師が訪問(午前)、1日1回、週3~4回理学療法士が訪問(午後).
4、平成17年7月6日から平成19年9月現在まで、週5回看護師が訪問(午前)、1日2回、週4回理学療法士が訪問(午前・午後).
今回は以上4パターンでの訪問期間中の、午前中のSpo2をカルテより調査した.
【結果】
spo2の平均値の結果(平均値±標準偏差)は以下のようになった.1の期間97.13±1.04%、2の期間97.58±1.28%、3の期間97.77±0.63%、4の期間97.57±0.60%.
【考察】
今回の対象に対して理学療法士が介入し、その頻度が1日2回になったのは、患者本人が介入により日中の排痰が楽になったとのことからであった.今回の結果からは、各期間ともにspo2は97%台と良好に保たれていたと考えられ、理学療法士が介入したことによる変化は分からない.しかし、今回の対象では各パターンでの介入の期間の長さにも差があり、介入方法も若干の変更がある.これらを考えると、今後理学療法士の介入のない他の患者との比較等を行い、介入の効果を判定することが出来ればと考えている.
【まとめ】
今回、長期間に渡り介入を行っている筋萎縮性側索硬化症患者に対しての介入による変化を追った.今後他の患者との比較、比較方法の検討を行い、介入の効果を明らかにしていきたいと考えている.