理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-225
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生活環境支援系理学療法
介護予防事業における呼吸法教室の効果
―訓練プログラム変更後の効果検証―
滝沢 真実曽根 理
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抄録
【はじめに】
某町の介護予防事業における呼吸法教室に関わり、2年の経過において努力呼気を要する呼吸機能が低下しやすく、また個々の能力差を認めたことから、呼気筋力訓練や個々の負荷量調整に重点を置きプログラム変更する必要性を考えた(第43回理学療法学術大会で報告).今回はプログラム変更して6ヶ月間介入した効果検証を行うこと、そのプログラムの有効性と今後の介入方法を検討することを目的にデータの分析を行った.
【方法】
対象は平成20年4月から9月の6ヶ月間継続して呼吸法教室に参加された10名(女性10名、平均年齢74.0±5.5歳).呼吸法教室は保健師2名と理学療法士1名で週1回90分、呼吸筋力訓練とストレッチ、下肢筋力訓練、バランス訓練、歩行訓練、呼吸法指導を実施.今回は風船を用いて努力呼気を促す呼気筋力訓練と、姿勢の修正を図り個々の能力に合わせて行う下肢筋力訓練に重点を置いた.効果検証のため平成20年4月と9月に、呼吸機能検査、右膝伸展筋力、片脚立位時間、Functional Reach Test(以下FR)、シャトルウォーキングテスト(以下SWT)、健康関連QOL(以下SF-36)を測定.SF-36は、8項目下位尺度を得点化後、身体的健康度(以下PCS)と精神的健康度(以下MCS)を算出.統計処理は、Wilcoxonの符号付順位検定を行い、4月値と9月値を比較.有意水準は5%未満とした.尚、測定は同意を得た上で実施し、個人情報保護法を遵守した.
【結果】
4月値と9月値の比較において、右膝伸展筋力が158.8±60.2Nから191.6±74.8Nへと有意に向上した(p=0.047).FRは26.7±6.0cmから29.8±5.6cmへ、片脚立位も53.0±40.1秒から83.9±50.0秒へと改善の傾向を認め、SWTも28.8±6.5シャトルから27.5±7.1シャトルへと変化したが有意な差は見られなかった.呼吸機能に関しても有意な差は認めなかったが、1秒率が75.46±17.39%から71.31±16.99%、最大呼気流量も3.39±1.46L/Sから2.78±1.57L/Sと低下の傾向を認めた.SF-36では全ての値において4月値よりも9月値が低値となったが有意な差は認めなかった.
【考察】
下肢筋力が有意に向上したことに関しては、姿勢修正を図り運動方法の指導を適切に行ったことで、最大負荷に近い運動が可能となり向上につながったと考える.逆に呼吸機能は低下傾向が見られ、これは風船による訓練では適切な負荷がかからなかったこと、また加齢による呼吸機能の低下を認め、呼気筋力訓練のみでは対応しきれなかったことが予測される.呼吸機能を維持し息切れを生じにくくしていくためには、呼気筋力訓練だけでなく運動時の呼吸法指導などを行っていくことも重要であると考える.
【まとめ】
週1回の関わりでも介入方法によっては筋力向上を図ることが可能であったが、呼吸機能に関しては維持を図ることが難しい状況がある.今後は運動方法や負荷量調整を再度検討し、呼吸機能維持へ向けてアプローチしていきたいと考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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