理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-228
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生活環境支援系理学療法
女性高齢者尿失禁予防教室への取り組み(第2報)
―教室の効果について―
吉田 遊子中藤 佳絵神﨑 良子橋元 隆天野 賢治田舎中 真由美西井 久枝
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抄録
【目的】尿失禁は日常生活活動の低下を招く一因であり、北九州市は介護予防推進のため排泄ケアに取り組んでいる.平成19年度に行政より委託を受け、市内3地区の理学療法士等が尿失禁予防教室(以下、教室)に取り組んだので報告する.
【対象】3ヶ月間全8回の教室に参加した女性高齢者64名(A地区:29名、B地区:16名、C地区:19名)のうち、有効データ51名を対象とした.なお、対象者には参加申込み時に教室の内容を説明し、同市作成の同意書にて本事業の結果報告について同意を得た.
【方法】教室1回目の初期評価(以下、初期)および7回目の最終評価(以下、最終)で得られた評価項目を尿失禁の種類〔正常18名(うち、失禁経験あり8名)、腹圧性尿失禁(以下、腹圧)23名(うち、混合性尿失禁7名)、切迫性尿失禁(以下、切迫)9名〕で比較検討した.さらに初期および最終評価の変化も比較検討した.評価項目は年齢、身長、体重、排尿日誌による排尿回数、尿漏れ回数、排尿量、飲水量とQOL評価として、キング健康調査票(以下、KHQ)を使用した.KHQは9項目が0~100点で算出される.
【結果】年齢は正常群:70.2±4.3歳、腹圧群:68.3±4.4歳、切迫群:75.2±6.0歳であった.初期・最終の1日排尿回数は正常群と切迫群(p<0.05・p<0.01)、腹圧群と切迫群(p<0.01・p<0.05)、で有意差があった.最終の日中排尿回数は正常群と切迫群(p<0.05)で有意差があった.初期の夜間排尿回数は正常群と切迫群、腹圧群と切迫群で有意差があった(p<0.01).最終の尿漏れ回数は正常群と腹圧群(p<0.05)で有意差があった.1回排尿量は初期・最終の正常群と切迫群(p<0.01)、初期の腹圧群と切迫群(p<0.05)で有意差があった.KHQはほぼ全項目において正常群、腹圧群、切迫群の順でQOLが低下していた.「身体的活動の制限」では正常群と腹圧群、正常群と切迫群で、「心の問題」では正常群と切迫群で、「睡眠・活力」では正常群と切迫群、腹圧群と切迫群で、「重症度評価」では正常群と腹圧群で初期・最終ともに有意差があった.さらに最終の「仕事・家事の制限」「重症度評価」では正常群と切迫群が、「心の問題」で腹圧群と切迫群に有意差があった.初期と最終の比較では、正常群で日中排尿回数、1日排尿回数、1回排尿量で有意差を認めた(p<0.05).KHQでは正常群の「全体的健康感」と「心の問題」、また、腹圧群の「全体的健康感」で有意差を認めた(p<0.01).
【考察】骨盤底筋体操の指導を中心に排尿習慣や飲水の指導などミニ講座も開催し、参加者が打ちとけ易い雰囲気作りに配慮して教室を実施した.教室参加を通して正常群、腹圧群でQOL向上が図れた.同体操は軽度から中等度の腹圧性尿失禁に効果があると言われており、定量的な評価の必要性を感じた.また、今後は参加者の選定が課題である.
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© 2009 日本理学療法士協会
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