抄録
【目的】当校では4年次総合臨床実習において急性期病院、回復期病院などで8週2回の臨床実習を行なっている.これに加え、介護老人保健施設(以下老健と略)に対して7週間の臨床実習を全員に課している.病院ではほとんどが患者担当制の実習を行なっているのに対し、老健では体験主体の実習を展開している.その内容として初日はオリエンテーション、1週目は老健臨床実習指導者(以下実習指導者と略)に終日同行、2週目は介護職、看護職など他部門見学・体験、3週目以後に専門職部門(理学療法)評価、リハプランの立案、実施計画書作成などを経験するマニュアルを作成し、平成19年より実施してきた.この中で問題解決型の学習効果を上げるために従来のディリーノートに代えポートフォリオを用いて実施している.実際に老健臨床実習でこの方式が効率よく実施されたか、学生のアンケート調査をもとに報告する.
【方法】実習前に実習指導者と当校の学生各々に、実習の進め方、ポートフォリオ作成方法(最初に目標を設定し、日々の記録をアクションシートという一定の書式を用い、1日ごとに問題解決型の記載方法をとる)の説明を行った.学生には規定の臨床実習2回と老健実習が終了した時点でポートフォリオ使用後の感想について、アンケート調査を行った.回答は、「整理しやすいか」、「指導者から助言がもらえたか」の2項目については、4.3.2.1の4段階(4を肯定、1を否定)で評価させ、「ポートフォリオと従来のディリーノートではどちらが使いやすいか」をポートフォリオ、ディリーノート、比較不能の3項目より選択させた.対象は平成19年度理学療法学科昼間部4年生37名で、事前にアンケートの趣旨説明し、同意を得ている.
【結果】「整理しやすさ」に対し、4が14名(37.8%)、3が17名(46.0%)、2が4名(10.8%)、1が1名(2.7%)、無回答が1名(2.7%)であった.「指導者から助言がもらえたか」に対し、4が11名(29.7%)、3が15名(40.6%)、2が6名(16.2%)、1が4名(10.8%)、無回答が1名(2.7%)であった.「使いやすさ」に対し、「ポートフォリオ」が23名(62.2%)、「ディリーノート」が6名(16.2%)、「比較不能」が6名(16.2%)、無回答が2名(5.4%)であった.
【考察】安田らのポートフォリオは、学生にとって簡潔で記載量が少ないため、実習現場での実習時間を有効に過ごすことを期待した.結果としては期待通り「整理しやすい」、「指導をもらいやすい」が多数であった.しかし「ディリーノートと比較した使いやすさ」では、期待通りの結果では無かった.これは深めたい知識の量が増えると、記載の量が増えてしまうことや資料が多くなり整理が煩雑になると考えられる.実習前の学生にポートフォリオでの問題解決型学習方法を徹底させることにより、このような問題点は少なくなると考えている.