理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-563
会議情報

教育・管理系理学療法
達成意欲が実習前の自己学習と実習後の満足度に及ぼす影響
―事前学習行動と実習前後のアンケートによる比較―
中川 司金尾 顕郎松原 勝美河村 廣幸松田 淳子上田 喜敏前田 薫三木屋 良輔丹羽 亜希美
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抄録
【目的】
初回の施設実習に対する学生の課題達成意欲が、実習前の自己学習にどのように影響し、事前学習を行うことが実習後の満足度に影響するのかを検討することで、今後実施される施設実習に向けて学内教育において自己学習を推進することの必要性を検証した.
【方法】
本学理学療法学科2年生72名に、実習開始3週間前のオリエンテーションにおいて、アンケートの目的を説明し承諾の得られた学生の回答を回収し、同様に実習後のアンケートを実習担当教員により面談時に承諾の得られた学生のみ回収した(回収率87%).実習前後のアンケートを共に回収できた学生63名中、実習前のアンケート内容から49名を対象とした.
実習前アンケートは、今回の実習に対する「不安感」「難易度」「達成意欲」の3項目をVisual Analogue Scale(VAS)で測定し、実習までに学内で放課後等に自己学習が必要かどうかを具体的な科目(動機づけ)と実習に期待する内容を記述式とし回収した.実習後アンケートは、今回の実習に対する「難易度」「満足度」と今後の実習に対する「不安感」の3項目をVASで測定し、回収した.実習前の自己学習行動は、学内施設(図書室・実習室)の利用状況を利用者名簿より検索した.実習前アンケートの結果から自己学習の動機づけがあり、具体的な科目の記述のあった学生49名を抜粋し、学内施設利用状況を確認した.動機付けの有無と実習までの学内での学習行動から事前学習を実際に行った25名(以下準備群)と事前学習を行なわなかった24名(以下非準備群)に分類した.
【結果】
準備群25名は、実習前アンケートにおいて、実習に対する「不安感」「達成意欲」が非準備群24名より優位に高く、「難易度」と施設利用頻度(自己学習頻度)に正の相関を認めた.実習後アンケートから、準備群では今回の実習に対する「難易度」が非準備群に比べ優位に低下したが、「満足度」は非準備群が高い傾向にあった.今後の実習に対する「不安感」は有意な差はみとめられなかった.また、準備群では、実習に期待する内容に「厳しさ」や「間違いの指摘」などの項目が多く、非準備群では「優しさ」や「丁寧さ」などに形容される記述が多かった.
【考察】
施設実習未体験の学生にとって、施設実習に対する「不安感」が高いことは当然であり、「達成意欲」が高い場合自己学習機会も多くなり、実習前後の難易度が優位に低下することから、学内教育において施設実習でのself imageを育成する目的で自己学習習慣を援助することが、必要であると理解できた.
【まとめ】
本学理学療法学科2年生49名を対象に実習前後のアンケートから学内で実際に学習行動を能動的に行った学生と行わなかった学生を比較し、自己学習が不安と達成意欲を要因に起こり、課題実施後の難易度を低下させることが解った.学内教育において自己学習を推進することが必要であると再認識した.
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© 2009 日本理学療法士協会
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