理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-566
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教育・管理系理学療法
臨床実習におけるスーパーバイザーの指導内容と学生の学習内容の相違点について
小宮山 一樹小林 賢鈴木 悦子長谷 公隆里宇 明元
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抄録
【目的】臨床実習において,毎日のスーパーバイザー(以下SV)の指導内容や学生の学習内容の実態を把握することは,効果的に臨床実習を進めるために重要である.そこで本研究では臨床実習におけるSVの指導内容と学生の学習内容の実態を把握するための方法を試み,SVと学生の相違点を検証することを目的とする.
【方法】対象は,SVと学生の6ペアであり,SVの理学療法士としての平均経験年数は10.7±4.6年,学生の平均年齢は21.6±0.5歳であった.SVの指導内容,学生の学習内容を把握するために,SVには「今日の指導ポイント」,学生には「今日の学んだ重要ポイント」として一日につき一項目,テーマと内容を記載させた.また,可能な限り毎日記載するよう指示をした.さらに,SV,学生の記載内容を「関東地区で共通に使用することを目的に作成された臨床実習評価表」に準じて「専門職としての適性およびふさわしい態度(以下,適正・態度面)」「理学療法実施のための情報収集・検査測定(以下,情報収集・検査測定)」「理学療法の治療計画の立案(以下,情報整理と治療立案)」「理学療法の実施(以下,治療の実施・実技指導)」「基礎知識」「症例報告書の作成・発表」「その他」に分類した.SV,学生の臨床実習評価表に準じた分類結果をそれぞれ百分率で示し,比較した.
【結果】SVから92件の指導ポイントを,また学生からは158件の学習ポイントを徴集した.回答率はSV43.4%,学生74.5%であった.SVの記載内容の分類結果は「適正・態度面」6%,「情報収集・検査測定」26%,「情報整理と治療立案」23%,「治療実施・実技指導」25%,「基礎知識2%」,「症例報告書の作成・発表」8%,「その他」10%であった.対して学生の記載内容の分類結果は「適正・態度面」0%,「情報収集・検査測定」18%,「情報整理と治療立案」8%,「治療実施・実技指導」47%,「基礎知識」17%,「症例報告書の作成・発表」3%,「その他」7%であった.
【考察】学生はSVと比較し,「治療実施・実技指導」や「基礎知識」についての比率が高く,「情報整理と治療立案」についての比率が低かったことから,SVと学生の日々の重要ポイントの捉え方に違いがある事が示唆された.このような違いが生じた原因として,学生にとって,「治療実施・実技指導」や「基礎知識」などが学習の結果としてわかりやすい項目であったこと,学校の授業では学習できない内容であったこと,学生の興味がそれらの内容に存在したこと等が考えられた.今後の臨床実習において,SVと学生の相違点を認識し包括的な指導を行うために,SVの指導ポイントや学生の学習ポイントを毎日の継時的な記述データとして残し利用していくことが有用であることが示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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