理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-554
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教育・管理系理学療法
理学療法士養成校における理学療法医療事故予防に関する教授状況について
小枝 英輝井上 由里成瀬 進高見 栄喜南場 芳文宮崎 純弥嶋田 智明
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抄録

【目的】平成17年に実習指導者に行った調査で、リスク管理教育は学内教員と実習指導者が連携して関わることが重要であることがわかった.今回は、学内教育における理学療法医療事故予防に関する授業実態調査を行ったので報告する.【方法】郵送による無記名質問紙調査を、理学療法士養成課程のある208校に平成19年2月に実施した.調査は7項目に及んだが、今回は理学療法医療事故予防に関する教授状況の教育内容や教育方法について報告する.倫理的配慮については、紙面により、対象を特定するすべてのデータを排除し匿名性を保証することを説明し承諾を得た.【結果】53校(回収率25.5%)より回答があり、4年課程33校、3年課程20校であった.「過去1年間」における理学療法医療事故予防に関する教授状況を教育内容別にみてみると、「理学療法医療事故の概念」について30校、「理学療法医療事故を予防するための方法」29校、「関係法規における理学療法業務範囲と責任」については27校が実施していた.「次年度」の実施予定については全ての項目について「過去1年間」の教授状況よりも低率であったが回答数の多い順に「理学療法医療事故を予防するための方法」24校、次に「理学療法医療事故の概念」、「理学療法医療事故の種類と構造」、「関係法規における理学療法業務範囲と責任」で20校であった.4年課程と3年課程の授業状況では、4年課程で実施割合が高かったのは「理学療法医療事故を予防するための方法」と「関係法規における理学療法業務範囲と責任」であった.他は3年課程の方が実施割合が高く、4年課程と比べ差が大きかったのは「理学療法医療事故発生時の状況」であった.次年度の教授予定については、すべての教育内容について4年課程での実施割合が高く、「理学療法医療事故を予防するための方法」では、3年課程との割合の差が48.6%と高かった.教育方法については、「過去1年間」において最も多く実施されていたのは、「説明を主とした講義」で次に「記述紙上事例」、続いて「技術演習」であった.すべての教育内容について「説明を主とした講義」が主に実施されていた.教育内容は、主に専門分野の基礎理学療法学を中心に教授されていたが、「人間の行動とヒューマンエラー」については基礎分野で、「理学療法医療事故を予防するための方法」については理学療法治療学で一番高率に取り上げられていた.臨床実習で教授されている割合の高い教育内容は、「理学療法医療事故を予防するための方法」と「理学療法医療事故発生時の状況」についてであった.【考察】理学療法医療事故予防に関する教授状況については、上位3項目についても50%代であり、理学療法安全教育に関する認知度が低いことが考えられる.教育方法に関しては、説明を主とした講義が中心であり、シミュレーションやグループワークを取り入れた有効な教授方法の開発も必要であると考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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