理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-043
会議情報

一般演題(ポスター)
体重免荷トレッドミル歩行時の自律神経活動
河合 克尚植木 努藤橋 雄一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
体重免荷トレッドミル歩行(BWST歩行)は,脊髄損傷患者や中枢神経系障害患者の機能回復のために用いられており,その効果についての報告が散見される。また,同時にBWST歩行が呼吸循環応答や下肢筋活動に及ぼす影響ついても検討されている。しかしながら,BWST歩行時の自律神経活動については明らかにされていない。したがって,本研究ではBWST歩行時の体重免荷量の変化が自律神経活動に与える影響ついて検討した。
【方法】
対象は,神経学的・整形外科的障害のない健常成人10名(20歳~33歳)とした。体重免荷は,可動式免荷装置(BIODEX社製アンウェイシステムBDX-UWS)を用いた。歩行条件は,傾斜率0%で免荷量を0%(FWB),25%,50%の3条件とし,歩行時間は各条件下5分,歩行速度は4km/hにて実施した。3条件の測定順序は,ラテン方格法により均等に割り付けた上で実施した。心拍変動の周波数解析は,双極胸部誘導法にて得られた心電図のR-R間隔を心拍計(GMS社製アクティブトレーサーAC-301)に記録し,時系列データから心拍変動の周波数解析プラグラムMemCalc法(GMS社製 MemCalc for windows version 1.2)にて周波数解析を行った。周波数は0.04~0.15Hzを低周波成分(Low Frequency:LF),0.15~0.40Hzを高周波成分(High Frequency:HF)と定義して解析した。HF成分は心臓迷走神経活動のみを反映するが,一方のLF成分は交感神経活動と心臓迷走神経活動の両方を反映するとされているため,LF/HF比を交感神経活動の指標として用いた。統計処理は,統計用ソフトウェアSPSS(13.0J)を用い,3条件間で一元配置分散分析を行った。各条件間に有意差が認められる場合は,Bonferroniによる多重比較検定を行うこととした。なお,有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
全ての対象者に対し,本研究の趣旨を十分に説明し,参加の同意を得て,ヘルシンキ宣言を遵守しながら実施した。
【結果】
BWST歩行時のLF/HF比は,FWB3.4±2.4,25%免荷3.7±2.3,50%免荷3.3±2.1であり,3条件間に有意な差は認められなかった。
【考察】
BWST歩行が呼吸循環応答に及ぼす影響ついて検討した報告によると,FWB,25%免荷,50%免荷の3条件間で酸素摂取量及び二酸化炭素排出量等に有意な差は認められなかったとしている。このことから,BWST歩行では体重免荷量に関係なく同程度の負荷が与えられることが示唆されている。したがって,本研究の結果においても交感神経活動の指標であるLF/HF比に有意な差が認められなかったものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,BWST歩行時の体重免荷量の変化が自律神経活動に与える影響について検討した。本研究の結果は,BWSTトレーニングを行う際に体重免荷量の設定やリスク管理の視点から有用な報告であったと考える。
著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top