抄録
【目的】
当院では、自然立位全脊柱側面レントゲン画像(以下:全脊柱レ線像)を用いて得られた情報をもとに評価し、リハビリテーションを実施している。体力低下が基となる慢性疼痛患者では、全脊柱レ線像における脊柱の生理的弯曲が減少もしくは増加するという共通点が多くみられる。そこで、腰椎弯曲頂点に着目し、体重支持指数(以下:WBI)と全脊柱レ線像を用いて、WBIと腰椎弯曲頂点との関係を比較検証した。
【方法】
2007年6月から2009年5月までに当院一般外来を受診した990名(男性363名、女性627名、平均年齢46.4±17.6歳)を対象とし、X-rayを用いて自然立位にて側面より脊柱全体の撮影を行った。体力の定量的評価としてWBIを用い、測定にはBiodex社製system3にて膝伸展筋群等尺性随意最大筋力を測定し体重比にて算出した。測定は左右1回ずつ行い、最小値をWBIの値とした。
分析方法は、全対象者の腰椎以下の弯曲頂点とWBIを抽出し、各指標においてノンパラメトリックによる多重比較を行い、有意水準は危険率5%未満とした。また、X-rayの特性上、弯曲頂点が不明確なものは対象から除外した。
【説明と同意】
当院倫理委員会の承認のもとに、対象者には口頭および文書にて研究の趣旨を十分に説明し、了承を得られたものを対象とした。
【結果】
弯曲頂点は第3腰椎62名(WBI:78.6±17.7)・第4腰椎557名(WBI:73.5±20.3)・第5腰椎357名(WBI:69.2±19.7)および第1仙骨14名(WBI:45.9±16.7)が対象となり、第1・第2腰椎に弯曲頂点を示すものは認められなかった。WBI最大値を示した第3腰椎に対し、その他の弯曲頂点を多重比較検定Steelの方法を用いて比較した結果、すべての弯曲頂点においてWBIに有意差が認められた。さらに、各弯曲頂点のWBIを多重比較検定Steel-Dwassの方法を用いた結果、第3・第4腰椎間にWBIの有意差は認められなかったが、その他の弯曲頂点間ではWBIに有意差が認められた。
【考察】
WBI最大値を示す第3腰椎に対しその他の弯曲頂点WBIを比較した結果、すべての弯曲頂点に有意差が認められたが、全体で比較すると第3・第4腰椎間に有意差は認められなかった。この結果は、第3腰椎に対し第4腰椎はWBI低値を示す傾向であり、それ以下の弯曲頂点は有意にWBI低値を示すことの裏づけとなった。WBIの低下、すなわち支持力の低下は荷重支持を椎体へ依存し、脊柱の弯曲がKendallによって提示されたSway-backもしくはflat-backへ移行したことを示している。換言すると、体力の低下は腰椎弯曲頂点が下位へ移行するという知見を得た。
【理学療法学研究としての意義】
臨床にて体力評価を行うにあたって、WBIの有用性についてはすでに実証済みであり、WBIは疼痛部位には左右されないとの報告もされている。腰椎弯曲頂点からみた体力評価は患者のWBIを推察する際に有効な手段であると考える。