理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-128
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一般演題(口述)
中学生に対するスポーツ傷害の予防の取り組み
浦辺 幸夫山中 悠紀大林 弘宗大隈 亮藤井 絵里
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キーワード: 中学生, スポーツ障害, 予防
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抄録
【目的】
膝関節のスポーツ傷害は足関節に次いで多く発生しており、特に膝前十字靭帯(ACL)損傷は社会的な面からの損失も大きく、予防が重要であることは共通理解である。筆者らはこれまでACL損傷が最も多い年代である高校生を対象にして、女子バスケットボール部員に対して2005年より予防プログラムを実施し、第43回本学術大会等でその成果を報告してきた。そのなかで、高校女子バスケットボール選手では予防プログラムに含まれる筋力、バランス、ジャンプ着地動作での下肢アライメントに普段の練習のみでは学年の進行にともなう改善がみられないことがわかった。
そこで、さらに対象を増やし継続して調査を行うとともに、高校生に至る前段階である中学生についての調査が不可欠であると考えた。実際に、高校生のACL損傷は発生頻度が最も高いが、中学生での発生も徐々に増えていると思われる。筆者らは、このような背景のなかで、広島市内の中学生に対するスポーツ傷害予防の取り組みを開始した。本研究は、調査1年目として、広島市内の中学生のスポーツ傷害の実態について明らかにし、まず内容を分析することから始める。これを今後のACL損傷予防の介入研究につなげる手立てとしたいと考える。
【方法】
研究協力予定校となる中学校へのヒアリング調査を2008年より開始し、教育現場でどのような課題があるのかを把握した。それをもとに、平成21年広島大学地域貢献研究として正式にプロジェクト研究を開始し、正式に研究協力を依頼し、広島市南区・安芸区の市立中学13校の協力を得た。本研究では、平成19年度に学校で発生したスポーツ傷害の実態調査をまず行い、各中学でのスポーツ傷害予防に対する課題を訪問調査し、要望に応じてさまざまな対応を行った。
【説明と同意】
本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座の承認を経て行われた。各中学校での調査について、校長の許可を得たのち養護教諭の協力のもとで実施した。対象が未成年であるため、必要な形態測定や身体機能テストを行う場合については、利益ならびに不利益を十分に説明し、対象と保護者の承諾を得た。
【結果】
各校に複数回の訪問を行い、傷害調査の結果をまとめると同時に、承諾を得られた学校からストレッチング指導、コンディションチェックとして下肢アライメント、バランス、瞬発力などの測定を行った。また、要請があった中学校ではストレッチング指導、アイシングなど救急処置の指導、スポーツ傷害に対する相談を行った。
平成19年度の13校の全在学生徒数は4,827名であった。傷害発生総件数は683件で,生徒1名あたりの傷害の発生率は平均0.14件だった。学校別での平均発生件数は15.1±4.3%であり、学校ごとに大きな差はなかった。傷害は校舎内で58.7%、校舎外で34.5%、登下校で6.8%発生していた。体育の授業を含めたスポーツ活動時の傷害が56.3%と多く、次いで休み時間という順であった。受傷したスポーツ種目の内容は球技(バスケットボール、バレーボール、野球、サッカー)が76.2%と圧倒的に多く、次いで陸上競技、器械体操であった。傷害部位は上肢が44.8%で最も多く、下肢が27.4%、顔面・頭部が22.7%、体幹が5.1%という比率であった。下肢についてみると、足関節49.4%、足部22.8%、膝関節14.3%、下腿部9.2%、大腿部4.4%だった。また、ACL損傷は2件発生しており、スポーツに関係したものは女性1件、女子生徒1名あたりの発生率は1,000人中0.41であった。傷害の内容は外傷などによる負傷が89.5%で、他は疾患に関係するものだった。傷害は、突き指を含めた捻挫、打撲、骨折などの順で多かった。
【考察】
今回、スポーツ傷害のみではなく学校で起こっている傷害全体の調査を行い、中学生の障害の56.3%はスポーツに関係すること、そしてその多くが球技で発生していることを確認した。本研究では限定された地区の対象ではあるが、介入研究を行うために基礎的な資料が得られたと考える。上肢の傷害が多く、下肢がそれに次ぐことは、下肢の傷害が多くなる高校生とは異なる点と考えた。下肢では足関節の傷害が半数を占め、膝関節に関するものは14.3%と必ずしも多くはないことが示されたが、スポーツに関連したACL損傷の発生を認めた。中学生の身体計測、運動機能についてコンディショニングチェックは進行中であり、この内容が次の課題になる。その後神経筋コントロールのための指導をどのように行うか、順に作業を進める計画である。
【理学療法学研究としての意義】
中学校でのACL損傷の発生頻度は高校生と比較して低いことが確認された。このように、中学生に対しての基礎的な傷害調査を行っておくことが、今後の研究の進展に不可欠と考えた。
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© 2010 日本理学療法士協会
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