理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-129
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一般演題(口述)
高校野球選手の全身関節弛緩性について
高尾 昌幸三浦 雅史
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抄録
【目的】
スポーツ外傷・障害の予防を目的としたメディカルチェックの一項目として、中嶋らの関節弛緩性検査(以下、GJL)がある。GJLは6大関節と脊柱の関節弛緩性を7点満点の総合得点で検査する方法である。
GJLは各部位の陽性割合にばらつきを有することが臨床上よく経験するが、そのばらつきについて検討されたものは少ない。
本報告は、高校野球選手におけるGJLの特性を明らかにするとともに、各部位について陽性割合のばらつきを検討した。
【方法】
対象は野球部に所属する高校生男子148名で、重篤な既往歴・現病歴を有する者を除外した。GJLは肩関節、肘関節、手関節、足関節について左右それぞれについて陽性であれば各0。5点とし、脊柱、股関節について陽性であれば1点とし、計7。0点満点で評価した。各関節の検査で陽性割合は上肢は利き手側、非利き手側で分類し、下肢は左右で分類した。上下肢の陽性割合における左右の比較は、χ2検定で判定した。左右の比較で有意差のなかった関節を一項目として各関節での陽性割合を求めた。各関節の陽性割合における差の検定はクロス表を用い、χ2検定、調整済み残差検定で判定をした。
【説明と同意】
全ての対象者には研究の主旨を十分に説明し、同意を得たうえで実施した。
【結果】
対象は148名から重篤な既往歴・現病歴を有する5名を除外した143名であった。対象の年齢は16。3±0。7歳、身長は171。8±5。4cm、体重は65。3±7。8kgであった。右利きは139名、左利きは4名であった。合計の平均点は2。4点±1。3点であった。
各関節の陽性割合は、多い部位から、利き手側肩関節143名中81名(56。7%)、脊柱143名中72名(50。3%)であった。少ない部位は、利き手側肘関節143名中17名(11。9%)、非利き手側肘関節143名中22名(15。4%)であった。左右の比較は、肩関節において陽性割合に有意な差が認められた (χ2(1)=32。1 p <0。001)。その他では左右で有意な差は認められなかった。
各関節の陽性割合における差の検定は、陽性割合に有意な偏りが認められた(χ2(11)=160。5 p<0。001)。
各関節における差を検討するために残差検定を実施した。利き手側肩関節(p<0。01)、脊柱(p<0。01)、股関節(p<0。05)、足関節(p<0。01)で陽性割合が有意に多かった。一方、非利き手側肩関節(p<0。05)、肘関節(p<0。01)、膝関節(p<0。01)では、陽性割合が有意に少なかった。手関節は陽性割合に有意な差が認められなかった。
【考察】
高校野球選手のGJLにおける身体特性として、肩関節では陽性割合に左右差が認められることだった。これは繰り返される投球ストレスによる上腕骨後捻、外旋筋群伸長性低下、後方関節包拘縮、内旋筋群伸長性増大、前方関節包弛緩などにより引き起こされているためと考えられた。また、利き手側肘関節で陽性割合が少なかった。
投球側の肘関節において、伸展可動域の減少は先行研究と一致する競技特性だと考えられた。
本報告のGJLの結果は、利き手側肩関節、脊柱、股関節、足関節で陽性割合が有意に多く、非利き手側の肩関節、肘関節、膝関節で陽性割合が有意に少なかった。
今回の結果から、GJLは各関節で陽性割合にばらつきがあるにもかかわらず、均一に配点されているため、合計点に選手の身体特性が反映されにくいのではないかということが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ選手に対する理学療法を実施する上で、競技特性を把握しておくことは非常に重要である。特にその競技選手の身体特性を理解することは理学療法評価や治療をする上で大きな助けとなる。今回、高校野球選手のGJLにおける特徴の一側面が示された。GJLは各関節での陽性割合にばらつきあることが明らかとなり、合計点に対し、その身体特性が反映されにくいことが示された。
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© 2010 日本理学療法士協会
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