抄録
【目的】
メディカルサポート(以下MS)は、静岡県高等学校野球連盟(以下静岡県高野連)の要請を受けて平成14年から開始し、今年の第91回全国高等学校野球選手権静岡大会で7年が経過した。MSでは試合前・中・後におけるテーピング等の応急手当、試合後の投手のクーリングダウンなどを実施している。また、審判員に対しても熱中症予防のためのドリンクを作製し、試合中の水分補給の手伝いを行っている。
近年、試合中に熱中症症状を呈する選手が増加しており、この対策が必要であると思われた。そこで、静岡県高野連加盟校に対しアンケートを行い、熱中症に対する予防を含めた対応について調査したので報告する。
【方法】
静岡県高野連に加盟している全119校に対し、第91回全国高校野球選手権静岡大会責任教師・監督会議において「熱中症における予防対策・飲水について」のアンケート用紙を配布し、FAXによる回答を依頼した。アンケート項目は「熱中症対策」、「飲水内容・補給方法」、「熱中症発症時の対応」の3項とした。
【説明と同意】
大会前の責任教師・監督会議において「熱中症における予防対策・飲水について」のアンケートについての主旨の説明と協力要請を行い同意を得た。
【結果】
1)回収率は80.7%(回収数96)であった。
2)熱中症対策については「実施している」が93.8%、「実施していない」が6.0%であった。具体的な対策としては飲水68、休憩21、塩分摂取18、アイシング9、自己管理指導6、着替え3、水筒・ペットボトルなど各自用意2、食事をしっかりとる2、ウォーミングアップ1、ベンチルクエン酸飲料摂取1、短い間隔での水分補給1であった(数は校数、自由記載、複数回答可)。
3)飲水についてはスポーツドリンク78、お茶58、水25、麦茶4、バヤラッカル2、クエン酸2、アルカリ水1、サプリメント1、各人好みのもの1、その他4であった(数は校数、自由記載、複数回答可)。水分補給方法については「自主的」が68.8%、「ある程度の管理下」が29.2%、「両方」が4.2%であり、「ある程度管理の下」の頻度としては「30分おき」が28.6%、「60分おき」が46.4%、「90分おき」が7.1%、「120分以上おき」が0%であった。
4)熱中症発症時の対応については「知っている」が88.5%、「知らない」が7.3%、「無回答」3.1%であった。具体的な対応として頸部等のアイシング69、日陰で涼しい場所へ57、可能であれば水分補給56、衣服を緩める27、意識不明は救急車要請16、保健体育の教科書程度2、下肢の挙上・マッサージ1、各症状により応急処置の記入されたファイルを持参1、選手や父母に説明会が行えればよいと思う1であった(数は校数、自由記載、複数回答可)。
【考察】
1)熱中症対策については、選手が自主的に水分摂取する方法をとる高校が最も多い。しかし、自己管理指導を実施しているとした高校は少なく、十分な熱中症予防が図られているとは考え難い。日本体育協会では運動前後の体重の変化が2.0%以内となるよう水分摂取することを勧めている。監督・責任教師による強制飲水と選手による自由飲水の併用を勧めると共に、選手に対する自己管理指導が必要と考える。
2)飲水についてはスポーツドリンクとしている高校が最も多かった。MSでも大会中は通常の1.5倍に薄めたスポーツドリンクを用意し飲水を促している。各高校に濃度調節も含めてますます普及させてゆきたい。
3)熱中症対策を「実施していない」と回答した高校が6.0%、熱中症発症時の対応を「知らない」と回答した高校が7.3%もあった。これは熱中症に対する危険性の理解が低いことを意味しており、MSにとって早急に解決しなければならない課題である。
4)大会中はMSが直接指導することができるが、普段の練習等においてはMSの介入はなく、各高校に委ねている。日頃の熱中症に対する関心の低さが、大会中の熱中症発症に関与していると考えられる。選手の自己管理と障害予防に関する意識を高めるため、選手や父兄を対象とした研修会などのMS活動が重要であると痛感している。
【理学療法学研究としての意義】
アンケートを実施したことにより各高校の熱中症予防対策、そして発症時の対応についての実態を調査することが出来た。調査結果より、各高校において熱中症発症時の回答が多く、予防に対しての知識不足が伺えた。殆どの高校で予防対策を実施しているという結果となったが、その対応が十分なものとは言い難い。日頃の熱中症対策が大会中の熱中症発症に影響しているとも考えられる。今後、選手が安全に練習、試合に臨めるよう熱中症予防対策を勧め、各高校の自己管理と障害予防に関する意識を高めていける様な活動を行っていく必要がある。