理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-143
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一般演題(口述)
高齢者における足趾外転トレーニングが立位バランス能力に及ぼす効果
松本 圭司淵岡 聡
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抄録
【目的】近年、高齢者の転倒予防対策として様々な足趾トレーニングが紹介され、足趾屈筋力及び足趾機能と立位バランスとの関連が報告されている。今回、日常的に実施する機会の少ない足趾外転運動をトレーニングとして用い、片脚立位バランスや最大1歩距離に及ぼす効果を明らかにすることを目的に、介入研究を実施し、若干の知見を得たので報告する。
【方法】下肢に整形外科的・神経学的疾患の既往のない健常成人23名を対象とし、トレーニング群14名(年齢:71.3歳±5.4、身長:154.7m±8.9、体重:53.8kg±9.4)、コントロール群9名(年齢:70.4歳±3.7、身長:156.8cm±5.4、体重:55.6kg±7.4)に無作為に分類した。トレーニング群は、端座位姿勢で非利き足の足趾外転を視覚で確認させながら、施行可能な最大可動域まで自動的に外転運動を毎日5分間、3週間行わせた。測定項目は足幅、足長、下肢長、膝伸展筋力、安静時及び外転時の母趾-示趾間距離(以下安静母示距離、外転母示距離)、示趾-小趾間距離(以下安静示小距離、外転示小距離)、片脚立位時の重心動揺(外周面積、総軌跡長)、最大1歩距離、足趾屈筋力とし、3週間のトレーニング前後に測定した。コントロール群は3週間、特別な運動を指示しなかった。トレーニング効果の判定は、各測定項目のトレーニング前後における平均値の差を対応のあるt検定を用いて比較することによって行い、危険率5%未満を有意水準とした。
【説明と同意】本研究は本学研究倫理委員会の承認を経た後、対象者に文書を用いて研究内容を十分に説明し、書面による同意を得て行った。
【結果】トレーニング群は、3週間のトレーニングの前後で安静母示距離(p<0.01)、外転母示距離(p<0.01)、外周面積(p<0.05)、総軌跡長(p<0.05)、最大1歩距離(p<0.01)、膝伸展筋力(p<0.05)に有意な向上がみられた。コントロール群では全項目において3週間の期間の前後で有意な差はみられなかった。
【考察】本研究におけるトレーニングは足趾外転運動を賦活することを意図したものであり、筋力強化を目的としたものではない。本トレーニングによって、安静母示距離、外転母示距離に拡大がみられたことは、外転運動により母趾外転に関与する筋群が賦活された結果と考えられた。足趾屈筋力が向上していないにも関わらず、外周面積、総軌跡長が減少したことは、安静母示距離の拡大により、片脚立位時に、重心が前方や母趾側へ動揺した際に、母趾を床面方向や外転方向に運動させ片脚立位バランスを保持するといった、母趾の運動様式の変化があると考えられた。また、外転母示距離の拡大により、母趾外転に関与する筋群が片脚立位バランスを保持するために有効に作用した可能性が考えられた。最大1歩距離が向上したことは、安定した片脚立位バランスをとることができ、振り出し時に重心を前方へ移動するために母趾の屈曲・外転に関与する筋群を有効に使用できるようになったためと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】足趾外転運動のトレーニングは、簡便で、日常的に誰でも遂行可能であり、一人で安全に行える運動であることから、高齢者に適した運動課題であると言える。また、足趾の筋力強化ではなく、足趾外転という巧緻的な運動が立位バランスの向上に関与している可能性が示唆されることから、高齢者の理学療法や転倒予防対策における有用なトレーニング法としての応用が期待できる。
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© 2010 日本理学療法士協会
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