理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-153
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一般演題(口述)
距骨下関節の肢位が骨盤回旋に与える影響
入谷式足底板に用いる骨盤回旋テストの検証
岩永 竜也亀山 顕太郎川井 誉清宮入 あや上野 倫史柴 朋秀斎藤 学
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抄録

【目的】入谷式足底板の評価では、機能的評価として入谷が考案した骨盤回旋テストを用いる。我々は、このテストを骨盤回旋に現れる左右差を観察し、距骨下関節の肢位を示唆するテストとして臨床上使用してきた。しかし、この骨盤回旋テストにおける距骨下関節誘導と骨盤回旋角の関係は明らかにされていない。そこで今回の目的は、臨床において使用している骨盤回旋テストが、距骨下関節の肢位を変化させることによって、実際の骨盤回旋に変化を及ぼしているかを検証することである。

【方法】対象は、健常成人20名40肢(男性13名、女性7名、平均年齢25.5±3.4歳)である。静止立位から一側下肢を半足分前に出し、足はつま先が正面を向くように置き、膝は伸展位を保持させた状態で、骨盤から上位を左右に回旋させ、左右の相対的な可動性を確認する。前額面と左右の上前腸骨棘を結んだ線のなす角を骨盤の回旋角度とし、頭側よりデジタルカメラで撮影し、画像処理ソフトimageJにて回旋角度を算出した。一側に対し前方回旋と後方回旋を行わせ、それぞれ距骨下関節誘導なし(以下誘導なし)、距骨下関節回外誘導(以下回外誘導)、距骨下関節回内誘導(以下回内誘導)の骨盤回旋角度を測定した。この時距骨下関節の回内と回外誘導には、同一検者が幅50mmの伸縮性テーピングを用い、スパイラル法にて距骨下関節を回内と回外誘導した。この結果を統計学的に分散分析の一元配置にて前方回旋と後方回旋をそれぞれ比較検討した。


【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、対象者に対して研究の目的について説明し、同意を得た上で研究を行った。

【結果】骨盤前方回旋では、誘導なしに比し回内誘導では有意に増大し(p<0.05)、回外誘導では有意に減少していた(p<0.05)。回外誘導と回内誘導間でも有意差があった(p<0.01)。骨盤後方回旋では誘導なしに比し、回内誘導では有意に減少し(p<0.05)、回外誘導では増大していた(p<0.01)。回外誘導と回内誘導間でも有意差があった(p<0.01)。

【考察】距骨下関節の回内外誘導は、骨盤の回旋に影響を及ぼすことがわかった。臨床において使用してきた骨盤回旋テストは、距骨下関節の誘導方向を示唆するテストとして、十分に使用できることがわかった。臨床上の使い方として、骨盤後方回旋で疼痛および後方回旋不足がある場合は、距骨下関節を回外誘導し、前方回旋で疼痛および前方回旋不足がある場合は、距骨下関節を回内誘導が有効である。つまり、距骨下関節の誘導は足部、下腿骨、大腿骨の運動連鎖によって、骨盤の遠隔操作も可能である。このテストを用いることで、股関節疾患のみならず腰部、膝関節疾患患者の距骨下関節誘導方向を決定することが容易であると考える。

【理学療法学研究としての意義】足底板作製に際し、距骨下関節肢位の決定は治療効果を左右するため、入谷式足底板で用いる骨盤回旋テストは、距骨下関節の肢位を決定する一手段として有効であると考えられる。

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© 2010 日本理学療法士協会
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