理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-195
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一般演題(ポスター)
シンスプリントに対する装具および足底板の疼痛軽減効果
三浦 雅史
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抄録

【目的】
シンスプリント(過労性脛部痛)は多くのスポーツ選手に出現する慢性スポーツ外傷の一つである。その多くはランニング、ジャンプ、ストップなどの反復的な運動により、脛骨内側部に圧痛や運動痛を有する「使いすぎ症候群」とされている。これは脛骨内側から後内側に付着する筋群やそれらを覆う筋膜への反復的な牽引、筋群の疲労による伸張性低下、足部の過回内等が要因となり炎症が生じるために発生する。2004年、著者はこの脛骨内側部の疼痛軽減を目的に「シンスプリント用装具」を開発した。2005年~2008年(第40~43回日本理学療法学術大会)には、この装具の有効性について報告した。一方、シンスプリントは前述のように足部の過回内による扁平足が起因しているケースも多い。よって、治療法の一つとしては足底板を用いる場合がある。そこで、本研究では本装具の疼痛軽減効果を確認すると共に、アーチサポートによる足底板との比較を目的とした。
【方法】
対象はシンスプリントと診断された高校運動部のスポーツ選手、男女22名(22肢)とした。競技種目は陸上競技、野球、バスケットボール、ハンドボール、フェンシングであった。対象はランダムに11名ずつ2群に分けた。シンスプリント用装具を装着する装具群とアーチサポートを足底板に装着するアーチサポート群とした。装具群に使用した装具は2004年に開発したものであり、脛骨内側部を圧迫する構造となっている。アーチサポート群に使用した足底板は内側縦アーチサポートを使用した。素材はソルボで、アーチ高は10mmとした。アーチサポートは普段使用しているシューズの中敷きに両面テープで貼付した。測定は装具群、アーチサポート群共に脛骨内側の疼痛についてVisual analog scale(以下、VAS)で評価した。装具及びアーチサポートは3ヶ月間使用し、3ヶ月後に再度、疼痛について評価した。この3ヶ月間、安静や服薬治療等は実施しなかった。また、この3ヶ月間、両群は通常の練習や試合にも参加した。VASは3ヶ月間の使用前後について比較した。統計処理はpaired-t検定を用いた。有意水準を5%未満とした。
【説明と同意】
対象が本研究に協力するにあたり、未成年であることを考慮し、本人及び保護者に研究の趣旨を説明し、同意を得た上で参加して頂いた。
【結果】
装具群のVASは使用前が5.7±1.5、3ヶ月後が1.8±1.3と有意に低下した(p<0.001)。アーチサポート群のVASは使用前が5.7±1.3、3ヶ月後が3.9±1.7と有意に低下した(p<0.01)。両群共に3ヶ月前後で有意に疼痛が軽減した。次に、各ケースについて比較すると、装具群の使用前後で11名中2名について疼痛が完全に消失した。アーチサポート群では11名中4名について疼痛が軽減しなかった。
【考察】
本装具による疼痛軽減効果については著者が以前に報告した結果と同様であった。アーチサポート群については使用前後で有意な疼痛軽減を認めた。しかし、個々のケースを散見すると疼痛軽減が認められなかったケースも少なからず存在した。シンスプリントに対する足底板の効果に関する先行研究では、足底板の有効性を報告しているものが多い。本研究のアーチサポート群で必ずしも疼痛が軽減しなかった理由として、アーチ高を一律10mmとしたことが挙げられる。また、内側縦アーチのみのアプローチでは不十分であったかもしれない。すなわち、各ケースの扁平足の程度に合致していなかった可能性が考えられる。今後は足底板の問題点を解決した上で、装具との比較を検討したいと考えている。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法における装具療法は重要な治療法の一つである。また、疼痛コントロールについても理学療法では重要な課題である。今回は装具療法、疼痛コントロールに関する治療効果を検討した研究であり、非常に大きな研究意義のある成果であったと考えている。

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© 2010 日本理学療法士協会
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