理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-168
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一般演題(ポスター)
TKA手術翌日からの積極的自主トレーニングが膝屈曲角度に与える影響について
渡部 裕之熊谷 雄介水谷 羊一片岡 洋一皆川 洋至田澤 浩
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抄録
【はじめに】当院の人工膝関節置換術(TKA)は年間170例を超える。有床診療所で多くの手術件数をこなすには、入院期間短縮が不可欠で、そのためには術後早期の機能回復、特に良好な膝関節屈曲可動域の獲得が必要になる。従来、術後ドレーン抜去後3日目からCPMを中心としたリハビリを行ってきたが、2009年からドレーンに関係なく、術翌日から複数メニューを患者に与える積極的リハビリへ方針変更した。本研究の目的は、手術翌日からの積極的リハビリが、どの程度術後屈曲可動域獲得に寄与するか明らかにすることである。

【対象】平成20年7月からの3ヶ月間にTKAを施行した29名41膝を従来リハ群、平成21年7月からの3ヶ月間にTKAを施行した44名52膝を積極リハ群とした。従来リハ群は男性4名、女性25名、平均年齢74歳(51歳から84歳)、積極リハ群は男性6名、女性38名、平均年齢75歳(61歳から85歳)で、両群間に性別、年齢の差を認めなかった。

【方法】病棟でのリハビリは、従来リハ群がCPM主体であったのに対し、積極リハ群ではCPMに加え、自主トレーニングを大幅に追加した。写真入りの自主トレーニングメニュー、自主トレーニングチェック表、屈曲可動域自己確認棒、リハビリ用紐、滑車付き板の5点セットを術後に渡し、1日5回を目標に自主トレーニングを行った。看護師が検温時に自主トレーニング状況を確認し、医師が早朝回診で屈曲角度を評価した。リハ室でのリハビリは両群同様に行った。術前、術後1週、最終調査時の膝屈曲角度、さらに術前屈曲角度に対する獲得屈曲角度(屈曲改善率)を術後1週、最終調査時で算出し、従来リハ群と積極リハ群で比較検討した(対応のないt検定)。

【結果】術前屈曲角度は、従来群132±15.7度、積極リハ群127±12.4度で両群間に有意差はなかった(p=0.15)。術後1週の屈曲角度は従来群90.7±15.7度、積極リハ群105±15.2度、屈曲改善率は従来リハ群69.5±11.6%、積極リハ群82.8±13.7%で2群間に有意差を認めた(p=0.000002)。最終調査時の屈曲角度は従来群105±11.3度、積極リハ群124±13.1度、屈曲改善率は従来リハ群80.4±12.9%、積極リハ群97.4±13.0%であり、2群間に有意差を認めた(p=0.00000001)。

【考察】積極リハ群は、従来リハ群に比較して術後膝屈曲角度、屈曲改善率共に有意に高く、術後早期からの積極的リハビリの重要性が示された。煩雑な外来と多くの手術症例数の中で、理学療法士が直接手をかける時間には限界がある。効率よくリハビリを進めていくためには、早期からの病棟での自主トレーニングをどのように有効活用するかがカギになる。

【結論】TKA手術翌日からの積極的リハビリによって、屈曲角度は従来に比べ術後1週で12%、最終的に17%改善した。
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© 2010 日本理学療法士協会
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