理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-187
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一般演題(ポスター)
心臓リハビリテーション患者の疾患別患者背景と転帰の調査
柴田 賢一中川 光仁神谷 昌孝森 弘幸森嶋 直人大野 修
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キーワード: 心疾患, 背景因子, 合併症
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抄録
【目的】平成18年度の診療報酬改訂により心臓リハビリテーション(以下心リハ)は心大血管疾患リハビリテーションとなり対象疾患も従来の狭心症、心筋梗塞、開心術後に大血管疾患、末梢血管疾患、慢性心不全が加えられた。第18回愛知県理学療法学術大会において対象疾患の拡大から当院の心リハ対象患者の高年齢化、在院日数の短縮化を報告した。
患者の高年齢化に伴い、合併症を多く持つ重複障害患者が増加していることは最近のトピックスとなっており、今後こうした背景の患者に適切な理学療法プログラムを立案し、治療していかなくてはならない。そこで現在の当院における心リハ患者の疾患別患者背景と転帰について調査したので報告する。

【方法】平成19年4月1日から平成21年3月31日までの2年間に当院において心リハを施行した全308例の中で同一疾患での再入院、先天性心疾患術後、外来のみの患者を除いた291例を対象とした。対象を疾患別に虚血性心疾患群(以下虚血群)76例、心不全群(以下HF群)101例、開心術後群(以下OP群)29例、大血管・末梢血管疾患群(以下血管群)85例の4群に分けた。各群の患者背景(性別、年齢、在院日数、合併症数)と転帰について診療録より後方視的に調査した。合併症数は1心疾患,2呼吸器疾患,3血管疾患,4下肢の骨関節疾患,5中枢疾患,6糖尿病の6項目における保有数で調査した。統計解析は年齢、在院日数、合併症数の比較に一元配置分散分析を用い、転帰の比較にはMann WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%未満とした。

【説明と同意】対象患者に対して実施された心リハ及び検査測定は、全て医師による説明がなされ同意が得られている。また情報は診療録より後方視的に調査した。

【結果】全体の内訳は男性192例・女性99例、平均年齢72±12歳、在院日数31±25日、合併症数2.0±1.1で転帰は自宅退院/転院/死亡が237/31/23であった。群ごとでは虚血群は76例(男性54例・女性22例、平均年齢69±11歳、在院日数27±19日、合併症数1.6±1.1)、転帰は自宅退院/転院/死亡が65/6/5であった。HF群は101例(男性50例・女性51例、平均年齢77±12歳、在院日数36±35日、合併症数2.5±1.1)、転帰は自宅退院/転院/死亡が74/14/13であった。OP群は29例(男性19例・女性10例、平均年齢67±10歳、在院日数34±17日、合併症数2.0±1.1)、転帰は自宅退院/転院/死亡が27/1/1であった。血管群は85例(男性69例・女性16例、平均年齢70±11歳、在院日数29±17日、合併症数1.8±1.1)、転帰は自宅退院/転院/死亡が71/10/4であった。平均年齢は他の全ての群に対してHF群が有意に高く、合併症数は虚血群・血管群に対してHF群が有意に多かった。在院日数は各群間に有意な差はみられなかったが、転帰はHF群とOP群において有意な差がみられた。

【考察】今回当院心リハ患者の疾患別患者背景と転帰について調査した。疾患別にみると当院心リハ患者はHF群が最も多く、他の疾患と比べて高齢で合併症を多く持つことが示された。心不全は多くの場合何らかの基礎疾患があり、また慢性の経過を辿るため他の群に比べて合併症が多く、平均年齢も高かったと考えられる。在院日数は各群間に有意な差はみられなかったもののHF群は3日から271日と他の群と比べて非常にばらつきが大きかった。この原因としては他の疾患は多くの場合プロトコールがあり、入院から退院まである程度目安があるのに対して、心不全は当院ではプロトコールが無いため退院の基準が不明瞭であることなどが考えられた。
心不全は高齢ということで基礎疾患を含めた病態や今回の調査項目のみならず家族背景・ソーシャルサポートなど他の疾患に比べて考慮する点が多く、入院が長期化する患者も多い。また従来のエルゴメーターやトレッドミルを用いた運動療法が行なえず、各患者のADLに合わせた訓練が必要となるケースも多くなってきている。今回の結果を基に今後は当院の患者背景の特徴を考慮した介入を行い、各患者の病態に合わせた理学療法プログラムの立案が必要と考えられた。

【理学療法学研究としての意義】今後心不全患者に対する心リハが増加し、さらに患者の高年齢化、合併症の多様化・複数化をむかえるといわれている。このため今まで以上に入院の長期化する症例を多く経験していくことになると考えられる。DPCも導入され入院期間の短縮が求められる情勢と複雑化する患者背景に対してどのように理学療法が介入していくかを検討するための基礎情報として今回の調査が有用なものになると考えられる。
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© 2010 日本理学療法士協会
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