理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-202
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一般演題(口述)
行政の理学療法士、作業療法士が関与する効果的な事業展開に関する研究
介護予防事業、地域包括支援センターについて
田中 康之小森 昌彦逢坂 伸子小池 晃由日下 隆一
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抄録
【目的】介護予防および地域包括支援センターの活動について、平成19年度の本研究結果を基に、市町村の状況を調査・分析し、理学療法士、作業療法士が関与する今後の介護予防、地域包括支援センター活動のあり方についての提言を行う。
なお、本研究は、(財)日本公衆衛生協会の平成20年度地域保健総合推進事業として、(社)日本理学療法士協会と(社)作業療法士協会の研究班にて実施した。
【方法】(1)介護予防事業
平成19年度の本研究において,介護予防事業の計画・運営・評価のすべてに理学療法士あるいは作業療法士が関与しており,かつ各市町村地域支援事業担当者が成果をあげていると回答した40市町村の理学療法士,作業療法士を対象に,介護予防事業の取り組みを質問紙により郵送調査した。
質問内容は,機能訓練事業と介護予防事業の比較,介護予防事業成果,成果をあげるための要素と阻害要因,理学療法士・作業療法士の役割の4項目とした。
(2)地域包括支援センター
1,843市町村の地域包括支援センター担当者を対象として、質問紙による郵送調査を実施した。質問内容は、市町村の基本属性(人口や高齢化率など)、地域包括支援センターの業務概況、理学療法士、作業療法士に対する評価と配置の必要性であった。
【説明と同意】調査票配付時に、調査目的等を明示した公文書を添付し、回答を得た。また、結果は統計処理を行い、自治体名などが特定されないよう配慮した。
【結果】(1)介護予防事業
21市町村(53%)から回答があった。介護予防事業では「虚弱高齢者の早期発見と適切な関わり」「地域づくりの視点の明確化」という利点もあるが、「理学療法士・作業療法士と他のスタッフとの協働の減少」「家族支援や仲間作りが困難」とった問題があった。さらに介護予防効果は「参加者の機能改善」「介護予防活動参加者数の増加」「地域づくり」が多く、介護予防効果指標は、「身体機能」「精神機能」「事業参加者数」「自主グループ活動」「関連部署間連携」「特定から一般高齢者への移行率」「要介護認定者数」が多かった。一方、効果的介護予防の要因は「終了後の継続性の考慮」、阻害因子は「縦割り組織」が多かった。そして、理学療法士・作業療法士の専門性に対する評価は「個別機能評価」「企画、実施、評価への一貫した関わり」で高かった。
(2)地域包括支援センター
回答市町村の約半数は、高齢化率25%以上で、リハサービスも「あまり充足していない」という状況であった。必置3職種以外で最も配置希望が多かったのは「理学療法士」次いで「健康運動指導士」であったが、理学療法士、作業療法士を配置している施設ほど理学療法士、作業療法士の必要性をあげている割合が高かった。業務量は、「包括的支援事業」「一般高齢者施策」「特定高齢者施策」の順であり、今後拡充したいと考えている事業は「ネットワーク作り」、次いで「特定高齢者施策」「一般高齢者施策」であった。 また、介護予防に従事している理学療法士、作業療法士の能力は、「疾患特有のアプローチができる」「運動機能・生活機能評価ができる」「ADL指導」「住宅改修・福祉用具の提案」について評価が高かったが、理学療法士、作業療法士の配置がある市町村はわずかであった。その理由としては、法整備と予算が挙げられていた。
【考察】介護予防事業では、機能訓練事業と現行の介護予防事業の利点の活用、専門職間連携の再構築、自治体の志向的取り組み等が必要である。また、身体機能のみではなく、生活そのものに密接に結びついた介護予防事業の評価が必要であり、介護予防事業の目標と位置づけ、他の地域保健事業との関連性など、地域社会における住民の共同と共生を基盤に構築する必要がある。さらに、理学療法士、作業療法士の専門性の有効活用について、地域社会への周知が重要である。
地域包括支援センターは今後、「ネットワーク型」「ワンストップサービス型」「事業型」「その他」に類型化が進むと予想できる。理学療法士、作業療法士 を配置している地域包括支援センターは、理学療法士、作業療法士 が生活機能を支援する専門職であることを理解し、今後もさらに活用したいと考えている。高齢者・障害者の「生活機能向上支援」を推進するためには、理学療法士、作業療法士 と協働の機会のない地域包括支援センターに理学療法士、作業療法士 の専門性を示し、地域包括支援センターの個性に合わせた活用方法を提案する必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】介護予防事業では理学療法士の参画の利点と課題、多面的な評価の必要性等が明らかになった。地域包括支援センターでは、殆どの市町村がリハビリテーションサービスに満足しておらず、特に理学療法士への要請は高かいことが明らかになった。
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© 2010 日本理学療法士協会
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