抄録
【目的】
厚生労働省介護給付費実態調査(2009年7月審査分)において、訪問リハビリテーション(以下 訪問リハ)の受給率は2.1%と居宅サービスのなかで2番目に少ない。介護保険制度の開始以来、訪問リハの受給率は年々増加している。しかし、訪問リハはマンパワー不足、ケアマネージャーの認識不足等が指摘されている。本研究ではケアマネージャーは訪問リハをどのような認識でマネジメントしているのかを調査し、今後の訪問リハサービスに役立てることを目的とした。
【方法】
対象は神奈川県横浜市鶴見区の居宅介護支援事業所53件(以下 事業所)に勤務しているケアマネージャー179名とした。調査方法は無記名の多肢選択式および自由記述式のアンケート調査を実施した。質問内容は基礎職種、実務経験年数、給付実績数、訪問リハ提供量の充足感とその理由、訪問リハをサービスに組み込んでいる件数、訪問リハの利用歴、訪問リハを必要と考えているが利用していない人数とその理由、他職種との情報交換の程度および手段とその理由、訪問リハサービスへの要望および訪問スタッフへ期待することとした。
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき調査内容の説明を行い同意が得られた事業所にアンケートを郵送した。
【結果】
事業所数52件、ケアマネージャー数178名、回収数137名、無効回答数0名、有効回答数137名、有効回答率77.0%であった。基礎職種は介護福祉士42.3%、看護師20.4%、歯科衛生士10.2%であった。実務経験年数は平均4.5±2.7年、最高11年、最低3カ月であった。給付実績は平均23.7±11.5件、最高47件、最低1件であった。訪問リハ提供量の充足感はケアマネージャーの50.4%が不十分とし、その理由は「マンパワー不足のため申し込みをしても断られる、長期間待たされる」が77.9%と特に多かった。訪問リハをサービスに組み込んでいる件数は平均1.79±2.02件、最高10件、最低0件であった。訪問リハの利用歴は今までに一度も訪問リハを組み込んだことがないケママネージャーが14.6%であった。訪問リハを必要と考えているが利用していない件数は平均1.22±2.66件、最高23件、最低0件であった。その理由は「本人・家族の希望がない」が38.1%、「マンパワー不足」が19.0%、「他のサービスで代用」が19.0%で特に多かった。他職種との情報交換の程度は十分・やや十分が75.9%、不十分・やや不十分が15.3%であった。不十分・やや不十分の理由は「お互いに多忙で時間の調整困難」が54.5%と特に多かった。情報交換の主な手段は「電話による情報交換」が33.3%、「サービス担当者会議」が27.0%、「文書による情報交換」が19.9%、「同行訪問をする」が19.4%であった。訪問リハサービスへの要望は「マンパワーの充足と訪問リハの利用方法を教えてほしい」が31.6%と特に多かった。訪問リハのスタッフへ期待することは「本人、家族および他職種へのリハビリ内容のアドバイス」が40.0%、「日常生活の維持および向上」が32.4%と特に多かった。
【考察】
ケアマネージャーは訪問リハのサービス利用に対して、申し込みをしても断られる、長期間待たされる、という認識の傾向があった。そのため、訪問リハサービスが必要と考えていても実際の利用に結びつかないことがあり、他のサービスを利用していることが多い傾向にあった。また、他職種との情報交換は十分・やや十分とするケアマネージャーが多いにも関わらず、情報交換は多忙で連絡を取り合う時間がないとし、情報交換の手段が電話もしくはサービス担当者会議での話し合いのみとしていることが多かった。このことはケアマネージャーが実際のサービス場面を見ることが少なく、利用者および家族の詳細な情報交換が十分ではなく、他職種との共通認識が得られにくい状況が考えられた。今後の課題は訪問リハのマンパワー充足が必要であり、また、他職種との共通認識を得るために綿密な情報交換が必要である。更に訪問リハの利用等に関する啓蒙活動も重要と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハに関する報告は症例報告、訪問リハの介入効果および介入方法等が多い。しかし、ケアマネージャーを対象としたアンケート調査は少ない。効果的かつ効率的な訪問リハを提供するためには、地域のケアマネージャーが訪問リハをどのような認識でマネジメントしているのかを把握することは重要である。本研究はケアマネージャーの認識を調査し、訪問リハを充足するための一助になると考える。