理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-216
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一般演題(ポスター)
当診療所における訪問リハビリテーションの現状と終了者についての検討
唐澤 裕子今井 武志小林 克守原 浩二竹内 亮子黒岩 亜紀角田 恭子井野 教子井野 正彦
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キーワード: 在宅, 地域, 訪問リハ
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抄録
【目的】在宅生活の推進や介護予防の必要性が高まる中で、在宅で提供されるサービスは今後、より重要になると考えられる。今回、訪問リハの現状を把握し、今後の課題を検討したので報告する。
【方法】対象は、平成12年4月から平成21年3月までの9年間に当診療所の介護保険または医療保険での訪問リハを利用し終了となった106名のうち、下記の調査が可能であった101名(平均年齢77.6±11.9歳、男性44名、女性57名。介護保険80名、医療保険21名。脳血管疾患36名、骨関節疾患44名、認知症4名、その他17名)とした。調査項目は、基本属性として性、年齢、疾患名、障害高齢者の日常生活自立度(以下、日常生活自立度)等の7項目、訪問リハ利用状況3項目、他サービスの利用状況7項目、訪問リハ終了理由の18項目とし、訪問リハカルテ、診療記録より後方視的に調査を行った。なお、日常生活自立度は訪問リハ開始時と終了時の2時点について調査を行った。平成18年度の医療・介護保険制度の改定による変化を把握する為、平成12~17年度の対象者70名と平成18~20年度の対象者31名について比較検討し、また、訪問リハ終了理由が目標達成であった対象者について検討した。
【説明と同意】調査は、当診療所の倫理規定に基づき、氏名は番号を用いて個人が特定できないようプライバシーの保護に配慮し実施した。
【結果】訪問リハ開始時の日常生活自立度は、J:1名(1.0%)、A:18名(17.8%)、B:64名(63.4%)、C:18名(17.8%)であった。家族構成は子と同居が63名(62.4%)、主介護者は配偶者が49名(48.5%)であった。訪問リハ開始時の疾患の発症後期間は3ヶ月未満が32名(31.7%)、3年以上が29名(28.7%)であった。訪問リハ開始時の状況は退院直後が36名(35.6%)、在宅で徐々に介助量増大等が27名(26.7%)であった。訪問リハ利用頻度は週1回が92名(91.1%)であり、平均利用期間は11.0±14.3ヶ月であった。他サービスの利用は有りが69名(68.3%)で、訪問介護が24名(23.8%)、訪問看護が16名(15.8%)、通所リハが15名(14.9%)であった。日常生活自立度の訪問開始時と終了時の比較では、改善が24名(23.8%)、維持が76名(75.2%)、悪化が1名(1.0%)であった。平成12~17年度と平成18年~20年度を比較した結果、疾患の発症後期間と訪問リハ開始時の日常生活自立度に異なる傾向がみられた。発症後期間が3ヶ月未満は平成12~17年度は27名(38.6%)、18~20年度は17名(54.8%)であり12~17年度と比較し多い傾向がみられた。日常生活自立度は平成12~17年度はB:48名(68.6%)、C:13名(18.6%)名、A:8名(11.4%)、18~20年度はB:16名(51.6%)、A:10名(32.3%)、C:5名(16.1%)であり、18年~20年度は軽度を示すAランクが増加した傾向がみられた。訪問リハ終了理由は、入院・入所・状態悪化・死亡が45名(44.6%)、通所サービスへの移行が36名(35.6%)、日常生活動作自立等の目標達成が19名(18.8%)であった。目標を達成した19名(男性6名、女性13名)の平均年齢は73.4±14.7歳であり、他の終了者の平均年齢は78.6±11.0歳であった。疾患名は骨関節疾患が13名(68.4%) 、訪問リハ開始時の日常生活自立度はB:13名(68.4%)、A:5名(26.3%)、C:1名(5.3%)であった。疾患の発症後期間は3ヶ月未満が10名(52.6%)であり、訪問リハ利用期間の平均は9.8±9.5ヶ月であった。日常生活自立度の改善は13名(68.4%)にみられ、悪化はみられなかった。【考察】今回の結果より、回復期に相当する対象者や日常生活自立度が軽度である対象者の増加、他サービスとの併用が示された。これらより、訪問リハにおいても機能改善で活動の自立度を高める視点、介護予防の視点がより重要であると考えられ、他サービスとの連携については必要性を再認識した。また、当診療所の訪問リハは平均利用期間が11ヶ月と比較的長期である傾向がみられた。この要因として、通所サービスの利用が困難または利用を拒否するケース、訪問リハを生活の一部とするケース、介護者の支援が特に重要であるケース等が考えられる。吉良(2008)は、訪問リハを展開する上では生活ニーズにあった断続的あるいは継続的な介入が必要とされると述べており、今後も生活ニーズを捉えながらサービスを提供していくことが重要であると考える。一方、目標の達成により訪問リハ終了となった対象者は年齢が低く、発症後期間が短い傾向がみられ、日常生活自立度の改善が多くみられた。目標の達成に年齢や発症後期間が影響する可能性が考えられたが、今後は詳細な評価を行い、訪問リハとしての効果、チームアプローチとしての効果を検証し、対象者や家族のその人らしい生活の再構築を支援する訪問リハを提供していきたいと考える。【理学療法学研究としての意義】在宅生活を支援する重要なサービスの1つである訪問リハの実際を把握し課題を検討することにより、より良いサービス提供に繋がると考えた。
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© 2010 日本理学療法士協会
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