理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-260
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一般演題(ポスター)
地域における訪問リハビリテーションの充実に向けて
井島 睦美濱口 隼人田中 恩藤嶋 厚志正司 真規
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抄録
【目的】当院では平成20年4月より専従スタッフを配置し、本格的に訪問リハビリテーション(以下 訪問リハ)を開始した。開始から約1年半が経過し、専従スタッフ9名、非常勤スタッフ4名となり、1ヶ月の延べ件数も1000件を上回るようになった。しかし、現在も依頼は増加傾向にあり、需要に対応できないことが多くなっている。そこで、今回当院が対応している地域内における訪問リハの需要を調査し、地域における訪問リハの充実に向けて当院の対応策を検討することとした。
【方法】当法人内の居宅介護支援事業所4施設のケアマネージャー(以下ケアマネ)27名に対し、訪問リハに関してのアンケートを実施した。項目は現在の担当者数、担当者中の訪問リハ利用者数、現在、訪問リハを介護保険サービスに導入したいと考えている利用者数、現在訪問リハを利用されていない方の理由(選択式)の4項目とした。尚、データは平成21年7月時点のものとする。
【説明と同意】当法人内のケアマネに対し、調査内容の目的等の説明を行い、同意の上アンケートの協力を得た。
【結果】現在の担当者数:803名(1人当たり30±9.6名)、現在の訪問リハ利用者数:103名、
現在、訪問リハを導入したいと考えている担当者数:37名、現在、訪問リハを利用されていない方の理由:「他サービスが優先されるため(35.3%)」、「利用者の希望がない(ADLが自立している)ため(34.0%)」、「その他(16.2%)」が上位を占めており、「その他」の中には「依頼はしたが断られた(遠方のため、スケジュールの関係上)」、「自宅訪問に拒否的なため」、「介入時間が短いためなど」の意見がみられた。
【考察】今回のアンケート結果から、当法人内のケアマネが担当している利用者中、訪問リハを利用されていない方は700名であり、アンケート実施時に今後訪問リハを導入したいと考えている方が約37名いることがわかった。当院ではスタッフ一人当たり最大35件の介入が可能であるため、今回調査した約40件の需要に対しては、単純計算で1、2名のスタッフ増員にて対応できると考える。
また、現在訪問リハを利用されていない方の理由は「その他のサービスが優先されるため」が多く、40.7%を占めており「依頼はしたが断られた(遠方のため、スケジュールの関係上)」などの意見もみられた。このように依頼があってもスケジュールや地域の関係上、対応できないこともある。現在、スタッフ13名全員が同じ場所から出発しているため、非効率な移動となってしまうスタッフもいる。そこで、訪問リハの拠点を開設することで移動効率の向上を図り、現在対応できていない地域などへの訪問範囲の拡大につながれば、より多くの需要に対応できるのではないかと考える。
ケアプランでは、在宅生活を送る上で欠かすことの出来ない食事や排泄、入浴、買い物などを援助する訪問介護、外出機会やリハビリ、入浴を一度に行える通所サービスは必要性の高い支援であるため優先的に組み込まれているが、訪問リハはこれらのサービスと比較すると介入率が低い。しかし、退院後の継続したリハビリを行う必要性がある方や他者との交流が苦手な方、長時間の外出が困難な方など身体機能に関する個別的リハビリや自宅内で行なえるリハビリを希望される方も多いため、訪問リハを希望される方に対して十分なサービスを提供できる体制を整えていく必要がある。
今回充実化に向けての対策を検討する第一段階として需要を把握することができたため、今後はスタッフの増員、拠点の開設などの実施に向けて取り組んでいきたい。
【理学療法学研究としての意義】介護保険の改訂に伴いここ数年、在宅医療の必要性が高まっており、今後さらに訪問リハの需要も高まるのではないか。そこで、訪問リハの効率化に向けての対策を検討する上で、まずは当院が対応している地域の需要を把握する事が必要ではないかと考えた。
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© 2010 日本理学療法士協会
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