理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-274
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一般演題(ポスター)
介護予防通所リハビリテーション利用者に対する簡易健康アセスメント表の開発と妥当性の検討
霜下 和也後藤 伸介茶谷 雅明高 圭介
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抄録
【目的】
介護予防におけるアセスメントは個々の機能のみでなく、生活機能や社会参加、健康状態など包括的に行うことが重要とされている。我々は、介護予防通所リハビリテーション(以下、通所リハ)において要支援者に対する簡易健康アセスメント表「Wellness Support System」(以下、WSS)を開発・運用し、利用者の自律的な生活や健康増進を支援するツールとして活用している。今回、WSSの妥当性を検討するために、健康関連QOLとの関連性について検証した。
【WSSの概要】
WSSは、生活問診(生活習慣・健康状態・支障のある生活活動・関心事等計22設問を聞き取り調査にて実施)と体力検査(握力・30秒間立ち上がりテスト・片脚立ち時間・FRT・TUG・最大10m歩行時間・3分間歩行距離)により構成され、得られた値に係数を掛け合わせて、「疾病」「栄養」「体力」「脚力」「日常生活」「社会活動」の得点を算出している(最高100点)。評価内容を5段階に細分化したり、利用者自身が支障のある生活活動の順位付けや関心事のリストアップを行うことにより、行動の変化や目標を捉えやすいようにしている。また結果を得点化して用紙で示すことにより、自身の健康状態や課題をイメージしやすいようにしている。当通所リハではアセスメントやその結果のフィードバックを3ヶ月毎に個別に行っており、現在の所要時間は併せて1時間以内である。
【方法】
対象は当院通所リハを利用している要支援者92名とし、内訳は要支援1が32名(男性11名・女性21名・平均年齢75.8±8.5歳)、要支援2が60名(男性27名・女性33名・平均年齢75.1±7.2歳)である。WSSは上記内容を行い「疾病」「栄養」「体力」「脚力」「日常生活」「社会活動」の得点を算出した。健康関連QOLはSF-8(振り返り期間1ヶ月)を使用し、下位尺度8項目と身体的・精神的サマリースコアを算出した。
WSSとSF-8の合計点及び各下位尺度間における関連について、Spearmanの順位相関分析を行った。
【説明と同意】
対象者には通所リハサービス利用時に個人情報に関する倫理的配慮等の説明とデータ利用に関する許諾を得た。
【結果】
WSS合計点は425±54.5、SF-8合計点は357±49.5であり,相関係数は0.415であった(P<0.0001)。下位尺度間では相関関係はみられなかった。
【考察】
介護保険制度における介護予防ケアマネジメントにおいては、「活動・移動」「日常生活」「社会参加・対人関係・コミュニケーション」「健康管理」の各領域をアセスメントすることとされている。従って、通所リハにおいても総合的なアセスメントを行う必要があり、加えて利用者自身に健康状態をわかりやすく伝えるような工夫やプログラム立案・効果判定が適切に行えるようなシステムが必要であると考える。今回、通所リハ利用者の生活機能を総合的かつ簡便に評価することを目的にWSSを開発し、その妥当性を検討した。WSSとSF-8の合計点に相関が得られたことから、それぞれの評価内容や結果の算出方法に違いはあるものの、利用者の生活機能や健康状態を捉える指標として近似した傾向を示しており、WSSが一般的な尺度と一定の整合性があることが示唆された。一方、本研究では下位尺度間において関連がみられなかった。これは全体の傾向としては近似するものの、WSS下位項目が多面的要素を評価した結果であるため、SF-8下位尺度との不整合が生じたことが考えられる。従って、全体的な健康度を捉えるには有効ではあるが、課題を明確にするにはひとつひとつの評価結果を解釈していくことが必要であると考える。
介護予防においては対象者の主体的な取り組みが重要であり、動機付けや継続のための意欲が保たれるような工夫が望まれる。WSSを通所サービスに組み込むことにより、利用者自身が健康状態や課題、行動の変化、目標を捉えやすくなる等のメリットが得られているが、WSSはあくまでもツールであり、これを有効に活用する為には生活背景を広く捉えたり、利用者の行動変容を引き出すような面接技術や介入が必要なため、これらの技術の研鑽は評価者側の継続した課題と考えている。また、今後は簡易性を高めるためのアセスメント項目の絞込みや下位尺度因子の再検討等を行い、臨床的有用性の向上を図りたいと考えている。
【理学療法学研究としての意義】
WSSは要支援者の健康度を概略的に捉えるツールとして有用であり、適切に運用することにより通所リハ利用者・支援者双方にとって課題分析やプログラム立案、効果判定が行いやすくなることが示唆される。
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© 2010 日本理学療法士協会
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