理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-228
会議情報

一般演題(ポスター)
足部形態と足底圧中心軌跡の関連
高橋 信人尾田 敦成田 大一鈴木 あおい赤平 拓也
著者情報
キーワード: 足部形態, 足底圧中心, 歩行
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】足部形態の個体差が歩行中の足底圧中心(center of pressure;COP)軌跡にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにし、静的な状態での足部形態の評価をもとに,動的な場面(歩行立脚相)での足部中央におけるCOP軌跡の通過位置を予測することができるかどうかを検討することである。
【方法】弘前大学に在籍する健常大学生30名60足(男15名、女15名)を対象として、足部形態の評価、及びCOP軌跡の測定を行った。対象者は、平均年齢21.6±1.9歳、平均身長164.2±8.7cm、平均体重57.0±11.9kgであった。足部形態の測定項目は、アーチ高率、Leg Heel Angle(LHA)、踵骨外反傾斜角、第一趾側角度とした。アーチ高率は足長に対する舟状骨高の割合によって算出した。LHA、及び踵骨外反傾斜角は、前額面における立位姿勢を後方からデジタルカメラで撮影し、画像処理を行った。LHAは下腿遠位1/3の中点とアキレス腱付着部の中点を結ぶ線と、アキレス腱付着部の中点と踵骨遠位端の中点を結ぶ線とのなす角度を、踵骨外反傾斜角は踵骨遠位端の中点とアキレス腱付着部を結ぶ線と水平線とのなす角度をそれぞれ計測した。第一趾側角度は、Pedoscope上自然立位での撮影画像を処理し、足部内側縁の接線と母趾の内側接線のなす角を計測した。歩行時のCOP軌跡の測定には、圧力分布測定装置FSA(Verg社製)のオルソセンサーマット(35cm×35cm)を使用した。口頭指示とデモンストレーションを実施後、センサーマットの位置を調節し、被験者に素足で歩くように指示した。歩行開始から第3歩目の踵接地から足尖離地までを記録し、左右足部各5試行を繰り返した。歩行率は被験者の任意とした。画像処理ソフトを用いて、測定した1試行の足底圧分布の踵後縁から前足部前縁までの内側接線の中点をAとし、Aからの外側接線までの距離βとAからCOP軌跡までの距離αを計測し、(α/β)×100を算出して5試行の平均を1足の%COPとした。この%COPの値から、平均値の95%信頼区間(95%CI)を求め,平均値±95%CIを標準値とし,それ以下を低値,それ以上を高値として、低値を示す群を内側群、標準値を示す群を中央群、高値を示す群を外側群とした。統計処理では、それぞれの足部形態の測定項目において内側群、中央群、外側群の3群間の比較を行った。群間比較には、Tukey検定を用い、有意水準は0.05とした。
【説明と同意】すべての被検者には本研究の趣旨と方法について事前に説明し,研究協力への同意を得た。未成年者には本人に加え、保護者からの同意を得た。
【結果】アーチ高率では、内側群と外側群、中央群と外側群の間に有意差は認められなかったが、内側群と中央群の間に有意差が認められた(p<0.05)。踵骨外反傾斜角では、内側群と中央群、中央群と外側群の間に有意差は認められなかったが、内側群と外側群の間に有意差が認められた(p<0.05)。LHA、第一趾側角度では、群間に有意差は認められなかった。これらの結果から、アーチが低く踵骨が回内傾向にあるとCOP軌跡は内側を通過することが示唆された。足部形態の測定項目間の関連性においては、アーチ高率と踵骨外反傾斜角、LHAと踵骨外反傾斜角に相関があったが、第一趾側角度と他の項目間の相関は弱かった。
【考察】COP軌跡は健常者においても多様なパターンを示すと言われているが、そのパターンに影響を及ぼす因子は明らかにされていない。そのため、本研究では、歩行時のCOP軌跡が内側に変位する場合、立位時のアーチの低下、踵骨の回内が影響を及ぼすという仮説の検証を行った。その結果、静的立位時にアーチが低下し、踵骨が回内する傾向にあると歩行立脚期での足部中央におけるCOP軌跡は内側を通過することが示唆された。本研究では、測定にセンサーマットを使用したため、歩行周期中の立脚期のみの観察であること、測定時の条件設定としては必ずしも自然な歩行とはいえない可能性があることが本研究の課題であると考える。今後、これらの課題を解決するには、インソールタイプのセンサーシートを使用した測定が望ましいと思われる。また、足部中央だけでなく、前足部におけるCOP軌跡の通過位置の分析も加えて検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】足部形態が歩行に及ぼす影響は、さまざまに考察されているが、未だに根拠が明確ではないと思われる。臨床において足底挿板療法を実施する際においても臨床家の経験に頼るところが大きいと感じる。本研究を進めることは、臨床での歩行分析や足底挿板療法において、一つの根拠にすることが可能である。
著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top