理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: OF2-001
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口述発表(特別・フリーセッション)
ラット足関節不動による痛覚閾値の変化に対する加齢の影響
濵上 陽平田中 陽理本田 祐一郎近藤 康隆片岡 秀樹坂本 淳哉中野 治郎沖田 実
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キーワード: 痛み, 不動, 加齢
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抄録
【目的】
われわれはこれまで,8週間継続してラット足関節を不動化したモデルを用い,足背部における痛覚閾値の推移を調査してきた.その結果,不動2週目から痛覚閾値の低下が認められ,この痛覚閾値の低下は不動期間に準拠して著しくなった.また,不動を解除しても4週間は痛覚閾値の回復は認められず,慢性痛に発展している可能性が示唆された.一方,臨床場面をみると有痛性疾患の多くが高齢者であり,わが国における慢性痛保有者率も高齢になるほど増加していることから,痛みの病態あるいは発生メカニズムに加齢が影響をおよぼしていると推察される.しかし,これまでの動物モデルでの検討では痛覚閾値の変化に対する加齢の影響は一定の見解は示されていない.また,上記のわれわれの先行研究は8週齢の若齢ラットを用いた検討であり,他者の研究でも不動によって惹起される痛覚閾値の低下が加齢の影響を受けるか否かは明らかにされていない.そこで本研究では,24ヶ月齢の老齢ラットの足関節を不動化したモデルを用い,不動期間中から不動解除後まで経時的に痛覚閾値の推移を調査した.そして,先行研究で示した若齢ラットの結果と比較し,加齢の影響を検討した.

【方法】
本実験では,24ヶ月齢に達した老齢のWistar系雄性ラット(老齢ラット)14匹を用い,これらを無処置の対照群(n=4)と右側足関節を最大底屈位の状態でギプスで不動化する不動群(n=10)に振り分けた.不動期間は4週間(4I群;n=6)と8週間(8I群;n=4)を設定し,それぞれの不動期間終了後は不動を解除してさらに4週間通常飼育した.実験期間中は週に1回の頻度で足背部に4・8・15g のvon Frey filament刺激を各10回加え,逃避反応の出現回数を測定することで機械刺激に対する痛覚閾値を評価した.また,同頻度で足背部の熱痛覚閾値温度を測定し,熱刺激に対する痛覚閾値を評価した.なお,先行研究で用いた若齢ラットは8週齢のWistar系雄性ラット25匹で,対照群(n=5)と不動群(不動期間4週間;n=10,8週間;n=10)を設定し,上記と同様の方法・頻度で痛覚閾値を評価している.

【説明と同意】
今回の実験は,長崎大学動物実験委員会が定める動物実験指針に基づき,長崎大学先導生命体研究支援センター・動物実験施設において実施した.

【結果】
対照群に比べ4I群ならびに8I群の痛覚閾値は,機械刺激,熱刺激とも不動2週目から有意に低下し,不動期間に準拠して低下し続けた.一方,不動を解除すると4I群は4週後には痛覚閾値の回復を認めたが, 8I群は回復が認められなかった.次に,先行研究で示した若齢ラットの結果と今回の老齢ラットの結果を比較すると,機械刺激,熱刺激とも痛覚閾値の低下が生じ始める時期に違いはみられず,不動解除後の痛覚閾値の推移も同様であった.しかし,4gの機械刺激に対する8I群の痛覚閾値に関してのみ若齢ラットと老齢ラットで違いがみられ,不動5週目から不動解除2週後までは老齢ラットが有意に高値を示していた.

【考察】
今回の老齢ラットの結果から,1)不動2週目から痛覚閾値の低下が生じ始め,これは不動期間に準拠して著しくなること,2)不動期間が8週間におよぶと不動を解除しても4週間では痛覚閾値の低下は回復しないこと,といった2点が明らかとなり,これらの結果は先行研究における若齢ラットの結果と同様であった.つまり,不動が痛覚閾値の低下を惹起すること,ならびに不動期間が長期間におよぶと慢性痛に発展する可能性があるということに関しては,加齢の影響は受けないと推察される.一方,4gの機械刺激に対しては,若齢ラットに比べ老齢ラットは不動による痛覚閾値の低下が軽度であった.したがって,加齢は低強度の機械刺激に対する反応性に影響をおよぼす可能性が示唆され,今後はその原因を組織学的・生化学的側面から検索する必要があると思われる.

【理学療法学研究としての意義】
本研究では,不動が原因で発生する痛みに関して,その発生時期や推移,ならびに慢性化する時期を老齢ラットを対象に検索し,先行研究で示した若齢ラットの結果と比較することで加齢の影響を検討している.つまり,痛みの予防・治療を加齢の影響も含めて考えていくための基礎データの一部を本研究は提示しており,理学療法研究としても十分な意義があると考える.
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© 2011 日本理学療法士協会
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