理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PF1-009
会議情報

ポスター発表(特別・フレッシュセッション)
側臥位を介しての起き上がり
異なる肩関節外転角度による筋活動様態
中島 雄基上田 哲久岩田 祥宏古瀬 辰孔濱口 卓也石田 麻奈大崎 万唯美黒川 奈美子五嶋 佳子
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抄録
【目的】本研究は、起き上がり動作時にどの様な筋が関与し、どの順序で作用しているかを知ることで日常生活動作指導に活かせるのではないかと考えた。そこで,側臥位を介した起き上がり動作の肘頭支持期から手掌支持期に着目し、肩関節外転角度が上肢・体幹の筋活動に及ぼす影響について検討した。
【方法】対象は整形外科的疾患のない健常成人男性11名、年齢は平均21.2±0.8歳、身長は平均173.7±5.4cm、体重は平均64.1±5.8kgであった。
起き上がり動作は、背臥位から右側臥位までを1相、右側臥位から右肘頭支持位までを2相(肘頭支持相)、右肘頭支持位から右手掌支持位までを3相(手掌支持相)、右手掌支持位から長座位までを4相と設定し分析した。 測定内容は肩関節外転角度30°60°90°の3パターンで各3回行い、表面筋電図を用いて計測した。また,課題終了直後、最も起き上がりやすい角度について口頭で質問した。表面筋電図はサンプリング周波数1500Hz、バンドパスフィルタ10~500Hzに設定した。筋電波形記録対象筋は、三角筋(前部線維、中部線維、後部線維)、前鋸筋、上腕三頭筋(内側頭、外側頭)、僧帽筋(中部線維、後部線維)、棘下筋、広背筋は右側に、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋は両側とし,アルコール綿で皮膚前処理後、表面電極を貼付した。計測した筋電波形を整流処理後,ビデオカメラによる画像より4相に分類し,肩関節外転角度30°60°90°における各相の平均振幅を算出した。統計処理は相別に30°60°90°の平均振幅について対応のあるt 検定を行った。有意水準は5%とした。
【説明と同意】被験者には本研究の主旨を十分に説明し,書面で同意を得た上で実験を行った。実験はヘルシンキ宣言に則って実施した。
【結果】肩関節外転角度において,起き上がり易い角度は,60°が8名が最も多く,次いで30°が3名,90°が0名であった。各相の平均振幅は,30°の2相では三角筋(前部線維・中部線維・後部線維),棘下筋,上腕三頭筋外側,僧帽筋下部線維が特に筋活動量が多かった。90°の2相,3相ともに上腕三頭筋,広背筋の筋活動量が多かった。3相では左腹直筋下部の筋活動量が多かった。対応のあるt 検定を行った結果,2相において,上肢では三角筋(前部線維・中部線維・後部線維) ,棘下筋,僧帽筋下部線維,上腕三頭筋外側頭の筋活動量は30°,60°,90°の順に多かった。僧帽筋中部線維の筋活動量は60°,30°,90°の順に多かった。広背筋の筋活動量は90°,60°,30°の順に多かった。右腹直筋下部の筋活動量は30°,90°,60°の順に多かった。3相において,棘下筋の筋活動量は30°,60°,90°の順に多かった。前鋸筋,右内腹斜筋,左内腹斜筋,右外腹斜筋の筋活動量は90°,60°,30°の順に多かった。右腹直筋下部の筋活動量は90°,30°,60°の順に多かった。
【考察】側臥位を介した起き上がり動作において,表面筋電図による筋活動量の分析を行った。その結果,30°では体幹筋が優位に働き,90°では上肢筋が優位に働いていた。60°では体幹筋と上肢筋が均等に働いていた。聞き取り調査においても60°が起き上がり易いと答えた人数が最も多かった。
各筋の機能については,棘下筋,前鋸筋,僧帽筋,三角筋が肩の動的安定化機構として働いていた。三角筋後部線維,上腕三頭筋が上腕を伸展しながら躯幹を持ち上げ,上腕三頭筋内側頭が純粋な伸展に働いていた。外腹斜筋,内腹斜筋は体軸回旋に,内腹斜筋は体幹の安定性に働き,腹直筋は骨盤の安定性に働いていた。
【理学療法学研究としての意義】肩関節外転角度30°では体幹筋の筋活動が多く,90°では上肢筋の筋活動が多かった。また,60°では体幹筋と上肢筋が均等に働いており,起き上がりやすい角度であると考えられた。筋力低下のある高齢者などの起き上がり動作指導および筋力強化に役立つと考えられる。
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© 2011 日本理学療法士協会
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