理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-153
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ポスター発表(一般)
脳血管障害片麻痺患者の視覚情報変化による立位重心動揺についての第2報
益山 大作
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抄録
【目的】立位正常姿勢制御は、視覚感覚情報等のシステムにより保たれている。視覚感覚情報変化が立位で足部支持基底面に姿勢制御変化を与え重心動揺に影響させると考えられる。前回(第44回全国学術大会発表)にて壁から鏡への正中軸注視により立ち直り・前後重心動揺に影響を生じ、脳血管障害片麻痺患者の立位アプローチに繋がると考察した。そこで、今回は、鏡より壁への正中軸注視により、脳血管障害片麻痺患者の立位重心動揺について若干の検討をしたので、ここに第2報として報告する。
【方法】対象に関しては2つの群とし、対象群は立位・歩行可能な脳血管障害片麻痺患者20例、内訳は男性13例・女性7例、平均年齢64.32±10.57歳、症例は脳出血10例・脳梗塞10例、右片麻痺10例・左片麻痺10例、Brunnstrom-Stage:3-7例・4-2例・5-6例・6-5例であり、コントロール群は正常人5例(男性1例・女性4例)で平均年齢21.2±0.4歳であった。 重心動揺計(スズケン社製Kenz-Stabilo101)にて静止時立位の開眼・閉脚・裸足の条件で対象群・コントロール群の全ての症例に、1鏡の正中軸・2壁の正中軸をとるように順に口頭指示し、1m先の目線の高さを30秒間注視する2課題とし治療前に1回のみづつ評価実施した。総軌跡長・外周面積・単位面積軌跡長・単位時間軌跡長・矩形面積・実効値面積・動揺中心変位X軸・動揺中心変位Y軸、以上について統計学的に比較検討をした。
【説明と同意】本研究は、当院倫理委員会の承認を受け対象者に目的・方法を説明した後、了承を得て施行した。
【結果】A対象群:総軌跡長;鏡61.47±28.27cm壁61.19±25.12cm・外周面積;鏡5.11±4.91cm2壁4.38±3.14cm2・単位面積軌跡長;鏡17.09±7.97 1/cm壁17.46±7.04 1./cm単位時間軌跡長;鏡2.04±0.94cm/s壁2.03±0.84cm/s矩形面積;鏡11.82±11.69cm2壁9.5±7.08cm2実効値面積;鏡0.4±0.36cm2壁0.36±0.28cm2動揺中心変位X軸;鏡1.21±0.77cm壁1.06±0.65cm動揺中心変位Y軸;鏡2.16±1.4cm壁2.34±1.16cmであった。対象群については、単位面積軌跡長と動揺中心変位Y軸(0.01>P)、動揺中心変位X軸(0.02>P)、その他の項目(0.001>P)であり、つまり全て有意差を認めた。 Bコントロール群:総軌跡長;鏡29.84±7.42cm壁26.43±5.08cm単位面積軌跡長;鏡29.11±10.39 1/cm壁24.18±7.14 1/cm動揺中心変位Y軸;鏡1.55±0.86cm壁1.8±0.18cmであった。コントロール群については、総軌跡長(0.05>P)、単位面積軌跡長(0.01>P)、動揺中心変位Y軸(0.001>P)の有意差を認めた。
【考察】対象群は前回(壁から鏡へ)より立ち直り・重心動揺に影響を生じ、コントロール群は前回より静的立位重心動揺・前後重心に影響を生じた。前回より今回(鏡から壁へ)の視覚感覚情報の変化の方が、より環境・立位姿勢制御・立ち直り・静的立位の重心動揺・呼吸・前後の抗重力筋活動筋緊張・足底支持基底面等に影響を及ぼすと考察した。脳血管障害片麻痺患者の立位アプローチの中で、視覚感覚情報変化・立位姿勢制御・足底支持基底面等を考慮してゆっくり丁寧にアプローチすることも重要と考察する。今後もより一層検討を重ねていきたい。
【理学療法学研究としての意義】脳生理学的には、外部環境(視覚)とボディイメージの相互作用をすると考えられる。前回・今回の視覚情報注視を変化させる事により、正中軸立位保持に必要な重心動揺は異なり脳内の視覚情報処理経路にも影響を及ぼすと考える。脳血管障害片麻痺患者の立位アプローチを介入する上でも、脳生理学的根拠・立位姿勢制御を考慮しながら、ゆっくり丁寧にアプローチすべきことが重要である。
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© 2011 日本理学療法士協会
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