理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-291
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ポスター発表(一般)
女子高校剣道選手のアキレス腱縫合術後の早期リハビリテーションプログラムとアキレス腱用装具開発の効果とその検討
貴志 真也鳥居 久展畑山 大輔
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抄録

【目的】
アキレス腱断裂後3ヶ月で剣道競技に復帰した女子高校剣道選手の症例を経験した。そこで今回、早期競技復帰に向けて当院で開発したアキレス腱断裂縫合術後の剣道用装具とアキレス腱縫合術後のリハビリテーションプログラムを紹介し、今後の課題について検討する。
【方法】
1)手術内容とリハビリテーションプログラムの紹介と検討:術後術式はTriple-Tsuge法+cross-stitch法で、リハビリテーションプログラムは、術後3日目:短下肢装具装着にて歩行開始(状態に合わせて部分荷重から全荷重)、患部外トレーニング、足関節背屈自動運動、足関節底屈以外の足関節筋力トレーニング(isometric)開始。術後2週間目:足関節底屈以外の足関節筋力トレーニング(isotonic)、タオルギャザー、足関節底屈自動運動、術後3週目:足関節底屈筋力トレーニング、術後4週目:エルゴメーター、術後5週目:裸足歩行、術後6週:両脚カーフレイズ、術後8週目:片脚カーフレイズ、剣道の摺り足と引き技練習。術後9~10週目:ジョギング、縄跳び、剣道の基本練習。つま先跳び20回出来ればスポーツ復帰。また、剣道の練習は当院で開発した装具を装着する。
装具は両側(内側・外側)にバネ支柱と底屈誘導バンド(ゴム製)を装着している。ズレを防止するため皮膚接触面はラバー素材である。
2)アンケート調査:(1)競技復帰から1年までの剣道競技の回復レベルについて。(2)アキレス腱用装具とテーピングとの比較(フィット感、安定感、安心感、動きやすさの4項目)。
3)MRIによるアキレス腱修復状況の確認(術後3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月)。
【説明と同意】
剣道の練習中、左アキレス腱断裂にて当院でアキレス腱縫合術を行った年齢17歳の女子高校剣道選手3名である。対象者には事前に発表の趣旨を十分説明し同意を得ている。
【結果】
対象者3名とも上記リハビリテーションプログラムに沿って、術後3ヶ月以内で競技復帰を果たし、県総合体育大会に出場し好成績を収めた。
回復レベルのアンケートについては、3~4ヶ月で60%、4~5ヶ月で70~80%、6ヶ月で90%、10~12ヶ月で100%であった。
装着感は、装具装着初期~5ヶ月までは全例とも安定性良く、蹴り出しをサポートするので装具が良いとの回答。ただし、5ヶ月以上になるとテーピングのほうが動きやすいとのことであった。
MRI のT2強調画像でのアキレス腱修復状況は、3ヶ月ではアキレス腱縫合部に高信号があり、周辺組織も腫れている状態で修復は十分とはいえないが連続性は得られていた。6ヶ月では高信号も消失し、周辺組織の状態も安定していた。
【考察】
剣道競技への早期復帰の要因は、断裂部の固定を強固にする術式と、剣道の練習開始に向けたアキレス腱用装具の開発により、早期リハビリテーションプログラムに沿ったリハビリテーションが行えたことである。したがって、当院で行っているアキレス腱縫合術後のリハビリテーションプログラムは、早期スポーツ復帰に有効であり妥当であったと考えられる。また、当院で開発したアキレス腱用装具は、術後5ヶ月までは底屈誘導バンドにより剣道の踏み込み動作における蹴りだしに有効であると思われた。さらに、アキレス腱が十分修復されたと思われる術後6ヶ月目はテーピングのほうが良いとのアンケート結果とMRIでのアキレス腱修復状況から装具除去の時期は6ヶ月と考える。今後の課題は、スポーツパフォーマンスにおける長期成績について検討する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ傷害のリハビリテーションにおいて、スポーツ現場への早期復帰は重要な課題の一つである。今回の報告は、スポーツ選手のアキレス腱修復術後における早期スポーツ復帰へのリハビリテーション指標や今後の課題を考える上において有効であると考える。

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© 2011 日本理学療法士協会
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