理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-297
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ポスター発表(一般)
骨関節系障害および障害予防に対する足関節・足部のホームエクササイズの効果
システマティックレビュー
美﨑 定也相澤 純也佐和田 桂一杉本 和隆
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抄録
【目的】
臨床において,理学療法士(PT)は骨関節系障害の改善や障害の予防を目的にホームエクササイズ(Home Exercise,HEX)を指導することが多い.足関節,足部のHEXの効果は足関節靭帯損傷再受傷の予防,高齢者に対する転倒予防についていくつか報告されている.しかし,ある治療介入の対照群としてHEXが用いていられていることが多く,HEX単独の効果については一定の見解が得られていない.また,HEXの方法として,個別あるいは集団での指導,運動方法が記載されたパンフレットの配布,ビデオ学習などが行われることが多いが,対象が容易に理解でき,かつ有効性が高い方法は明らかとなっていない.今回,骨関節系障害および障害予防に対する足関節・足部のHEXの効果についてシステマティックレビューを行い,現時点における有効性を調査した.

【方法】
Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses(Liberati.2009)に準じてシステマティックレビューを行った.文献検索は電子データベース(PubMed, J-stage)によるウェブサーチ,および引用文献のハンドサーチを行った.検索期間は1980年1月から2010年9月,言語は英語および日本語とした.適格基準は,1)ランダム化比較試験または準ランダム化比較試験,2)骨関節系障害を有する症例または障害予防目的の健常者,3)足関節,足部に対するHEXによる介入(対照群には必要最小限の介入または介入なし),4)疼痛,可動域,筋力,バランス,歩行などの身体機能,疾患特異的評価指標をアウトカムとしている研究とした.文献の質は独立した2名の評価者がPEDro scale(10点満点)を用いて評価し,一致しない場合は話し合いにより解決した.データの統合において,上記アウトカムに加えて,HEX指導の方法を抽出した.選択された文献の臨床的異質性が低く,同じアウトカムを測定した文献が3編以上ある場合はメタ・アナリシスを行い,臨床的異質性が高い場合は統合せずにPEDro scoreで判断した.

【結果】
130編の文献が検索され,適格基準を満たした5編が解析対象となった.文献間に高い臨床的異質性が認められたため,メタ・アナリシスを行わなかった.不安定板を用いたHEX(2編)において,足関節靭帯損傷後のアスリートに対する8週間の介入の結果,再受傷率が有意に減少した(Relative risk: 0.63, 95%信頼区間: 0.45-0.88,PEDro score: 8点).高校バスケットボールチームに対するシーズン前の介入の結果,シーズン中の急性外傷率が有意に減少した(0.71, 0.5-0.99, 9点).タオルギャザーなど足趾の筋力トレーニングによるHEX(3編)においては,健常高齢者に対する8週間の介入の結果,動的バランスが改善し(4点),若年者に対する4-6週の介入の結果,歩行能力が向上した(5点).これら5編のうち,1編は写真入りリーフレットを配布し,動画を用いて指導していた.2編はHEXの実施状況を記録させ,2編は週1回のPTの指導を与えていた.

【考察】
足関節・足部の骨関節系障害および障害予防に対するHEXにおいて,不安定板を用いたHEXは,PEDro scoreが高く,アスリートの障害の予防に有効であると考えられる.足趾の筋力トレーニングは健常高齢者の動的バランスを改善させ,若年者の歩行能力の向上に有効であると考えられるが,実際に転倒予防につながるか課題が残る.また,HEXの方法については,リーフレットの配布,動画やPTによる定期的な指導,実施状況の記録など,継続させるための対応の必要性が推察される.しかしながら,今回のシステマティックレビューでは文献数が少ないため,結果の一般化には十分と言いがたく,さらなる介入研究が必要であると考えられる.

【理学療法学研究としての意義】
足関節・足部のHEXの適用となる骨関節系障害,予防可能な障害,有効性の高い方法,媒体を明らかにすることは理学療法を実施するための一根拠となりえる.
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© 2011 日本理学療法士協会
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