理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-330
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ポスター発表(一般)
フロントランジの後脚に対する足関節テーピングが動作に与える影響
上野 有希子竹村 雅裕岩井 浩一山田 哲永井 智石丸 大介大垣 亮宮川 俊平
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抄録

【目的】フロントランジの後脚に対する足関節テーピングが,動作中の足関節・膝関節・股関節・体幹の関節運動に及ぼす影響を検討することを目的とした.
【方法】対象者は,前方引き出しテストが陰性 で,手術歴や過去1年以内に下肢関節傷害のない成人男性8名(平均年齢23.6±2.3歳,身長172.9±4.0cm,体重71.9±8.3kg)であった.課題動作はフロントランジとし,裸足とテーピング装着下の2条件でクロスオーバーに実施した.測定前にフロントランジの練習を行い,歩幅と視線の高さが一定となるように動作を規定した.足関節テーピングは,日本体育協会公認アスレティックトレーナーテキストに準ずる足関節内反捻挫予防の方法を,ボールを蹴る際の軸脚に施行した.テーピングはすべて同一検者が施行した.テーピング施行前後で足関節の可動域(底屈,背屈,内返し,外返し)を測定し,テーピングによる制限率を算出した.フロントランジをする際に,身体36点に反射マーカーを貼付し,各マーカーの座標値を三次元解析装置を用いて計測した.同時に床反力計を用いてフロントランジ動作中の前脚の床反力を算出した.得られた各マーカーの座標値から各関節位置を推定し,動作中の足関節(底/背屈,回内/外,内/外転),膝関節(屈曲/伸展),股関節(屈曲/伸展,内/外転,内/外旋)と体幹(屈曲/伸展)の角度を算出した.さらに床反力計のデータから合力を算出し,それらを体重で除した値を動作中の前脚にかかる力の割合とした.フロントランジ中の前脚が最大屈曲した時(Maximal Knee Flexion;MKF)の各関節角度と床反力の合力値を用いて裸足とテーピング装着で比較した.統計処理は全て対応のあるt検定を用いた.
【説明と同意】本実験は,筑波大学人間総合科学研究科倫理委員会の承認を得て,被験者への十分な説明と同意のもとで実施した.
【結果】テーピングの制限率は,底屈:16.2%,背屈52.5%,内返し:44.0%が制限であった.
フロントランジ動作のMKF時のテーピングを巻いた足関節背屈角度では,裸足時が23.4°であったのが,テーピング装着時では-23.5°と,有意な減少がみられた.(p<0.05)また,テーピングをしていない反対脚(前脚)の足関節内転角度dにおいて,裸足時11.5°であったのが,テーピング装着後に4.9°と,減少傾向がみられた.(P<0.1)その他の関節角度には,有意な差はみられなかった.また前脚への荷重値は,裸足と比べテーピング装着後に有意に増加がみられた.(p<0.05)
【考察】フロントランジ動作の後脚に対して足関節テーピングを施行すると,装着した足関節背屈角度の減少がみられ,動作中の関節運動に制限が生じることが確認された.また,テーピングを装着していない前脚の足関節においても足関節内転角度が減少し,前脚にかかる力の割合の増加がみられた.これらは,後脚に対する足関節テーピングの制限による影響を,前脚の足関節・荷重量の調節で代償した可能性があることを示している.後脚へのテーピングによる後脚足関節の足関節背屈制限により,後脚の体重支持が不安定となり,姿勢を維持するために前脚での体重支持の役割が増加したのではないかと考えられた.
【理学療法学研究としての意義】スポーツ活動中に発生頻度が高い足関節捻挫の予防・再発予防(杉本ら,1998)に対して,テーピングが頻繁に用いられる.テーピングが関節運動に与える影響を報告した研究は,テーピングした足関節の可動域自体への影響を報告したものが多く(Altら,2004),足関節以外の下肢や体幹への影響を検討した報告は少ない.
本研究で実施したフロントランジ動作において,後脚は軸足としての役割を持ち,前脚の踏み込み動作のスムーズな前方推進を行う上で重要となる.本研究の結果から,テーピング脚だけでなく他の部位に影響が表れる可能性が示され,歩行時・ランニング時の立脚相後期や,ボールを蹴る動作,剣道やフェンシングにおいても,後脚にテーピングをすることで他関節への影響を及ぼす可能性が考えられる.今後の展望としては,さらにスポーツ中に実際に求められる動作で検討する必要性があることが考えられる.

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© 2011 日本理学療法士協会
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