理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-314
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ポスター発表(一般)
外来RA患者におけるリハビリテーション介入時期の検討
IORRAデータの解析より
倉田 典和井上 永介(PhD)岩本 卓士桃原 茂樹山中 寿
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抄録
【目的】近年、関節リウマチ(以下RA)の治療は、早期から十分に有効な抗リウマチ薬を使用し、積極的に関節破壊を予防することに加え、生物学的製剤の登場により疾患活動性を長期に亘って抑える事が可能となってきている。リハビリテーション(以下リハビリ)においても、早期からの介入が重要と考えられるが、その効果に対する報告は少ない。我々は、大規模コホートデータを用いて、外来通院中のRA患者に対するリハビリの介入時期の統計的検討を行ったので報告する。
【方法】当センターでは、通院中の外来RA患者の大規模な観察研究IORRA(Institute of Rheumatology Rheumatoid Arthritis)コホート調査を実施している。本研究では、第16回2008年4月のIORRA調査(n=4479)時点でのリハビリ介入の有無を調査し、リハビリ介入の有無でJ-HAQ、CRP、DAS28それぞれ第15回2007年10月から第16回まで半年間の変化量についての比較に加え、有りと回答した患者(n=467)のリハビリ履歴をカルテで遡り、当院でのリハビリ継続期間別に半年未満(n=48)、半年以上1年未満(n=55)、1年以上(n=364)の3群に分けたサブグループ解析を行った。解析は、リハビリ介入の有無の単純比較にはMann-Whitneyを用い、リハビリ継続期間別のサブグループ解析には線形モデルを用いて、性別、年齢、発症年齢、治療期間、薬投与の履歴、手術歴、骨折歴および性別の影響を考慮したリハビリの効果について比較検討した。
【説明と同意】本研究は、東京女子医科大学倫理委員会の承認を受けたIORRA調査の一部として行われた。また、知り得た個人情報は個人が特定されないように処理を行い、セキュリティー対策の施されたコンピューターにて管理し、データを外部へ持ち出すことのないよう留意した。
【結果】リハビリ介入の有無での比較をした結果、J-HAQ、CRP、DAS28の変化量に対するP値はそれぞれP=0.16、P=0.93、P=0.20であった。続いて行ったリハビリの継続期間ごとのサブグループに対する線形モデルによる解析では、リハビリ継続半年以上1年未満の群がリハビリ無し群に対しHAQにおいて最大-1.5、平均-0.12、J-HAQにおいても最大-1.6、平均-0.12とどちらも有意(p<0.01)に改善したが、リハビリ継続半年未満の群ではHAQでP=0.16、J-HAQでP=0.28、1年以上の群ではHAQでP=0.16、J-HAQでP=0.13であった。また、リハビリ継続半年以上1年未満の群は、リハビリ継続半年未満の群に対してもHAQ、J-HAQにおいて有意(p<0.001)な改善を示唆した。更にリハビリ介入前の段階をベースラインとし、リハビリ介入の有る群と無い群において、性別、年齢、J-HAQ、罹病期間の分布が一致するようにマッチングした。その際のサンプルサイズは、有り群233名、無し群699名とした。これら抽出した集団を用いて、ベースラインから1年後のJ-HAQ変化量を解析した結果、リハビリ介入有りで-0.06と僅かであるが有意(p<0.05)に改善し、特に罹病期間5年以内において-0.14(p<0.05)とより効果がある結果が得られた。
【考察】前回我々の研究では、半年間のリハビリ継続によって、HAQおよびJ-HAQを維持し、CRPを低下させる可能性が示唆された。今回の結果では、半年以上1年未満のリハビリ継続によって、HAQおよびJ-HAQは改善したが、CRPは低下させるに至らなかった。但し、リハビリ介入群のCRPが亢進することもなかった。また、発症から5年以内においてリハビリがより効果的に作用していたことが示唆された。前回と同様にリハビリ経験がCRPを低下させるに至らなかった要因として、生物学的製剤を使用する患者の増加に伴い、前回調査時のCRP平均値1.34に比べ、今回調査時のCRP平均値0.73と低値であったことが影響していたのではないかと推測する。現在のRAに対する早期からの十分な内科的治療により疾患活動性は低下し、関節破壊を予防することに加え、早期から半年以上の期間を継続的にリハビリ介入することが、RA患者の身体的機能の維持および改善に効果的であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】大規模コホートデータを用いて、外来通院中のRA患者に対するリハビリ介入時期の統計的検討を行ったことにより、早期から継続的にリハビリ介入し続けることで、RA患者の身体的機能の維持および改善に効果があることが明らかになり、今後のRA患者のリハビリ開始時期の指標となりえることから、本研究の意義は大きいと言える。
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© 2011 日本理学療法士協会
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