理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PF1-038
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ポスター発表(特別・フレッシュセッション)
着地方向の違いによる片脚着地動作の特徴
佐々木 沙織遠藤 康裕三浦 雅史坂本 雅昭
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抄録
【目的】
着地動作はスポーツ活動においてさまざまな場面で行われており、スポーツ外傷における頻度の高い受傷機転として挙げられる。先行研究では、着地動作時の外傷の発生には動的アライメントが深く関連しているといわれている。しかし、これまでの分析はすべて前方への着地のみで行われている。実際、スポーツ活動時の着地動作としては後方や側方にも着地する場面が多くある。そこで本研究では、片脚着地の方向による違いに着目し、着地方向の違いによる着地動作の難易度と前額面でのアライメントについて分析することを目的とした。

【方法】
対象は下肢に既往のない健常女子大学生50名とした。対象の属性は年齢20.1±1.4歳、身長160.0±5.5cm、体重53.5±5.8kgであった。測定した着地動作は安定した片脚立位の状態で高さ30cmの台から落下し片脚着地するものとした。前方・後方・右側方・左側方にそれぞれ10回ずつ着地した。測定肢は全て右とした。着地後2秒以内に静止できた試行を着地成功とし、着地後2秒以内に静止できなかった試行や遊脚側の足底を床につけてしまった試行を着地失敗とした。前額面でのアライメントについては着地後足底全体が接地した時の膝関節・骨盤・体幹のアライメントを静止画にて分析した。膝関節アライメントは母趾中央部と上前腸骨棘を結んだ基線に対する膝関節中心の位置から、knee in/outを評価した。骨盤アライメントは、従来のTrenderenburg testと同様に、床と水平となる基線に対し、左右の上前腸骨棘を結んだ線の傾きから評価した。体幹アライメントは、頸部の中点と左右の上前腸骨棘の中点を結んだ線を床面からの垂直線を基に評価した。統計学的解析では各着地方向の違いによる失敗回数の差を、Scheffe法による多重比較検定を行い判定した。また、着地方向の違いによる前額面アライメント発生の割合の差を、クロス表でχ2検定、調整済み残差検定を行い判定した。さらに、それぞれの着地方向における発生率の割合の差は二項検定を行い判定した。なお、各検定における有意水準を5%とした。

【説明と同意】
対象に対しては本研究の目的や測定方法の概要を説明し、本研究への参加の同意を得た上で実験に参加して頂いた。

【結果】
着地動作の失敗回数については前方、後方に比べ左側方での失敗回数が有意に多かった(p<0.05)。膝関節アライメントについては前方・後方・左側方ではknee in、右側方ではneutralを呈する割合が有意に高くなった(p<0.05)。骨盤アライメントについてはすべての着地方向でTrenderenburg徴候陽性である割合が有意に高くなった(p<0.05)。体幹アライメントでは前方・後方・右側方では正中位、左側方では右傾斜を呈する割合が有意に高くなった(p<0.05)。

【考察】
これまで報告された片脚着地動作の分析では前方への着地のみ検討されている。本研究の結果より、前方への着地方向と比較して、各着地方向で着地動作の難易度と前額面でのアライメントに違いが認められた。特に、支持側と反対側への着地動作(本研究では、左側方への着地動作)ではその他の着地動作より難易度が高いことが示唆された。また、前額面でのアライメントにおいてもknee in、骨盤傾斜、体幹傾斜など他と比較して不良なアライメントを呈すことから、不安定性の高い着地動作であると考えられる。以上のことから、不良なアライメントの修正による外傷予防のためには、着地方向の違いによって呈するアライメントの特徴を理解し、それを考慮したアライメント修正を行うことが重要であると考える。

【理学療法学研究としての意義】
スポーツ動作ではさまざまなジャンプ動作が行われている。種目や場面もさまざまであるため、前方への着地動作の分析のみでは不十分であると考えられる。今回、このような多方向への動作を分析することで、実際のスポーツ場面での着地動作を想定した評価、エクササイズ選択が可能となると考える。
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© 2011 日本理学療法士協会
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