理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-386
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ポスター発表(一般)
エアマッサージ器による下腿周径とバイタルサインへの影響について
長谷場 純仁池田 聡
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抄録
【目的】上下肢などの局所的浮腫に対しての治療としてエアマッサージ器の利用があげられる。エアマッサージ器は、空気圧によって血液やリンパ液の還流を促すものとされるが、その効果についての報告は多くない。今回、健常者の下肢にエアマッサージ器を施行して、実際に下腿に加わる圧を測定し、異なるモードと強さ、時間における下腿周径の変化とバイタルサインへの影響について検証を行った。
【方法】対象は健常男性12名と女性4名の計16名(年齢24.7±4.1歳、身長169.1±8.6cm体重65.0±11.3kg:平均±標準偏差)。方法は、エアマッサージ器としてメドー産業株式会社製ドクターメドマーを使用し、対象の下肢に施行した。実施時刻は下肢にむくみを最も自覚する17時以降で、施行したモードはウェーブとスクイーズの2種類とし、実験ごとにそれぞれ別の日にわけて行った。下腿に加わる圧の測定の実験は、水銀血圧計を使用し、マンシェットを足首に巻き、その上から直接エアマッサージ器を2種類のモード、圧力設定1から3の3段階で施行し、それぞれの圧の最大値を求めた。周径の変化とバイタルサインの変化についての実験は、圧力設定3以上での長時間の使用は阻血をきたす可能性があると判断し、圧力設定を1と2の2段階で実施し、それぞれを10分、20分、30分施行後の下腿の最小周径と最大周径および血圧・脈拍を測定し、周径については施行前の値に対する変化量を求めた。統計的処理は、施行時間やモードや圧力設定の違いによる周径の変化量、血圧、脈拍について、2群の比較については対応のあるT検定を行い、多群間の比較には多重比較(scheffe法)を行った。
【説明と同意】対象には実験の内容及び手順について十分に説明を行い、かつ学会等への発表について同意を得た。
【結果】エアマッサージ器により下腿に加えられる圧は、ウェーブモードの圧力設定1で14.3±3.0 mmHg、2で40.0±2.7 mmHg、3で61.6±3.6 mmHgで、スクイーズモードの圧力設定の1で18.4±3.1 mmHg、2で37.6±2.3 mmHg、3で58.4±1.9 mmHgであった。施行時間における周径の変化量の比較は、ウェーブモードの圧力設定1での下腿最小周径と圧力設定2での下腿最大周径、スクイーズモードの圧力設定1での下腿最大周径と圧力設定2での下腿最大周径でいずれも施行時間10分後の変化量と30分後の変化量に有意差が認められた(p<0.05)。また、同じモードと施行時間についての圧力設定の1と2における周径の変化量の比較では有意差は認められず(p>0.05)、同じ圧力設定と施行時間についてのモード間における周径の変化量の比較では、いずれもスクイーズモードの変化量が大きい傾向を認め、なかでも圧力設定1での施行時間20分後と30分後にける下腿最小周径の変化量で有意差が認められた(p<0.05)。なお、周径の変化量が最も大きかったのはいずれもスクイーズモードの圧力設定2における施行30分後で、下腿最小周径が6.2±3.4mm、下腿最大周径が9.1±3.2mmであった。血圧や脈拍はモードや施行時間による有意差は認められなかった(p>0.05)。
【考察】エアマッサージ器による下腿に加わる圧は、カタログに記載されている気室圧力と差を認めた。また、本実験の条件下でのエアマッサージ器の施行は血圧や脈拍に影響しないことが示された。
下腿周径は施行時間30分の方が他よりも変化量が大きく、また、同じ圧力設定、施行時間であればウェーブモードよりもスクイーズモードの方が大きいことが示されたが、これは、スクイーズモードの方が下腿に加圧されている時間が長いことから、本実験の条件下ではより長い時間下肢に加圧した方が、周径の変化が大きいことが示唆された。しかし、毛細血管の動脈圧と血漿の浸透圧を考慮すると、圧力設定2が1よりもより効率よく周径が減少することが予測されたが、結果は周径の変化量に有意差が認められなかった。したがって周径の減少は、エアマッサージ器による下肢への加圧が毛細血管静脈への組織液の還流の促進によるものが主となると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本研究によりエアマッサージ器の設定や施行時間による下腿周径の変化やバイタルサインへの影響が示され、これら結果は臨床におけるエアマッサージ器施行の上での一助になるものと考える。
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© 2011 日本理学療法士協会
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