理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-426
会議情報

ポスター発表(一般)
加古川・高砂地域における大腿骨頚部骨折地域連携パスの運用とその問題点
河村 達也岡本 卓哉河合 かおり寺岡 佳美石黒 恵子田邊 誠
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】2006年の診療報酬改定により、連携パス加算が導入され、様々な地域で連携パスが運用されるようになった。連携パスのメリットとして平均在院日数の短縮、在宅復帰率の向上、ADLの回復などが多くの医療機関から報告されている。一方で転院時の患者の不安感や維持期リハビリテーションへの移行の難しさなど問題点も指摘されている。各病院群から在宅復帰に当たっての問題点を明らかにするため調査を行った。

【方法1】平成20年4月から平成22年3月までの2年間に当地域で大腿骨頸部骨折地域連携パスに参加する急性期5病院にて手術・加療を行った患者435名につき連携パスの利用率ならび介護保険申請者率を調べた。

【方法2】平成22年8月6日より当地域の在宅療養支援拠点を対象に情報提供様式が定まっていないことで不便を感じる点と今後の希望についてオープン形式アンケートを実施した。在宅療養支援に関わる診療所・クリニックの医師16名、地域包括支援センター26名、居宅介護支援事業所、施設担当等のケアマネージャー75名から回答を得た。

【説明と同意】本研究は所属施設における倫理委員会の承認を得て行った。

【結果1】連携パス利用率は5病院間でも最小2.8%から最大70.6%と大きな相違があり、治療方針等により普及に差が認められた。平均して43.9%の利用率であり56.1%の患者は急性期病院から直接、在宅療養支援拠点に帰っていった。また要介護認定を受けている人の割合は回復期病院からの退院では82.1%に対し急性期病院からの退院では52.7%と多くの患者が退院時にケアマネージャーとの連携がとれていないことが明らかとなった。

【結果2】情報提供様式が定まっていないことで不便を感じる点では医師からは情報内容が統一されていない。地域包括支援センター職員、ケアマネージャーからは医療者側の視点での情報提供が多く、退院後のリハビリや生活の注意点を直接確認する必要がある。専門用語・略語が分かりづらい。今後の希望として医師、地域包括支援センター職員、ケアマネージャーともに統一モデルの作成。在宅生活の注意点の記載の充実等であった。

【考察】大腿骨頸部骨折の治療目的は早期に骨折前のADLまでに復帰できることであり、地域連携のメリットとして、地域医療の効率化、社会福祉資源の有効利用、地域医療従事者の連帯感、在宅医療の充実などが挙げられる。連携パスをこの点から見ると地域全体での効率的な情報提供・共有の点で問題が残る。特に病院退院の維持期リハビリテーションへの移行時の情報提供において様式が統一されていない点が混乱を生じさせていると考える。また医療者側の視点から情報提供が行われており、介護事業者の求める情報が伝えられていないことも問題として挙げられる。今後、介護者側に立った見地から統一した情報提供様式を築いていくことが大切だと考える。当地域のみならず連携パス全体の抱える課題であると考える。

【理学療法学研究としての意義】大腿骨頚部骨折地域連携パスの運用と問題点がいくつか明確となった。今後、介護事業者側に立った見地から統一した情報提供様式を築いていくことが大切であることがわかった。

著者関連情報
© 2011 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top