理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-429
会議情報

ポスター発表(一般)
在宅パーキンソン病およびパーキンソニズム患者の排尿障害と介護負担について
古塚 孝太竹内 裕幸加藤 明美宇都山 欣也斉藤 香飯干 康孝藤原 美樹子村山 大輔辻 民喜平林 渉皆見 健太郎
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抄録

【目的】
在宅でのパーキンソン病およびパーキンソニズム(以下、本疾患)患者のリハビリテーション(以下、リハ)を考える上で、トイレ動作とそれに伴う同居家族の介護負担は重要な課題の1つである。臨床的にはパーキンソン病や大脳基底核に病変を有する脳血管障害患者では、排尿筋過活動による頻尿・尿失禁を高頻度に認めるとされているが、同居家族の介護負担についてはあまり調査されていなかった。そこで、排尿手段と機能的自立度評価表(以下、FIM)について調査し、現状を把握することを目的とした。
【方法】
対象は平成22年5月から同年9月までの間に当院訪問リハを利用した本疾患患者22名(男性12名、女性10名、平均年齢79.4±7.7歳)とした。調査は各リハ担当者が調査表を用いて口頭にて聴取した。調査項目は、罹患年数、Yahr分類、同居家族数、FIM(日中)、排尿手段(日中、就寝中)、排尿回数(日中、就寝中)、転倒回数とした。
統計処理は各項目(排尿手段は順位化)をFriedman検定、多重比較をScheffe法により有意水準5%で行った。
【説明と同意】
対象者には書面および口頭で本研究の目的と趣旨を説明し同意を得た。また、調査表は無記名とし個人情報が漏洩しないように留意した。
【結果】
FIM合計点と罹患年数、Yahr分類、排尿手段(日中)、排尿手段(就寝中)、排尿回数(就寝中)、転倒回数の間にそれぞれ相関関係がみられた。各項目の結果は、平均罹患年数6.2年、平均同居家族数1.3人、平均FIM合計点93.5±27.4点、排尿手段は便所(日中90.9%、就寝中50.0%)、ポータブルトイレ(日中0.0%、就寝中13.6%)、尿器(日中0.0%、就寝中9.1%)、おむつ(日中9.1%、就寝中27.3%)、尿道留置カテーテル(日中0.0%、就寝中0.0%)であった。平均排尿回数(日中4.1回、就寝中2.8回)、平均転倒回数1.5回(1ヶ月当り)であった。
【考察】
Yahr分類と排尿障害の間には相関関係があるとされているが、今回の調査ではFIM合計点と排尿手段、排尿回数(就寝中)、転倒回数の間にも相関関係があることが分かった。
正常な排尿回数とは、日中およそ6~8回、夜間0回(1回以上で夜間頻尿)とされているが、井上らによると本疾患患者は夜間頻尿を訴えていても、昼間の排尿回数は普段と変わらないことが多い、としている。Leesらによると80%に夜間頻尿がみられ、33%が夜間排尿3回以上であったと報告している。今回の調査でも本疾患に夜間頻尿が顕著にみられることが分かった。
就寝中の排尿回数2.8回では、就寝時間を8時間とすると2時間51分に1回は起きなければならない。全体の40.9%は排尿動作に何らかの介助を必要としているが、夜間はon-off現象や覚醒度が低下していることにより介助量はさらに増大すると考えられる。全体の59.1%が老-老介護(配偶者と二人暮らし)であり、体力的にも大きな負担である。また、就寝中も50.0%が便所を使用しているが、この内54.5%が歩行に介助を要している。便所以外を使用しない理由は、本人が使いたがらない、スペースが無い、後始末が大変、等であった。夜間頻尿は同居家族にとって大きな負担となっているが、心理的な抵抗感や住宅環境の問題等によって福祉用具を利用していない現状が分かった。
便所以外では、就寝中のおむつ使用者が2番目に多かったが、この内1名は排尿後のオムツの蒸れが不快であるため自分で取り外してしまい、排尿のたびにシーツや着衣を汚してしまっていた。当ケースでは同居家族の介護負担は非常に大きいものであるため、近年発売された尿センサー付き吸引型おむつ(ユニチャーム社製ヒューマニー)の使用を検討した。3日間の試用の結果、同居家族の介護負担は著しく減少したが、尿タンクの容量不足や吸引チューブが外れ易い、等の問題点も判明した。
訪問リハでは、夜間の排尿動作に直接介入することは困難であり、問題点が見えにくい現状がある。そのため、リハ担当者の方から積極的に情報収集を行っていく必要がある。今回の調査でも平均罹患年数が6.2年と長く、自己流の介助方法が定着しているケースもみられ、福祉用具への心理的な抵抗感も多くみられた。そのため、家族指導とともに福祉用具を実際に試用することで介護負担量が軽減することを実感してもらうことも重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
在宅における本疾患患者のリハを考える上で、理学療法士は身体能力面へのアプローチだけに着目しがちであるが、福祉用具の活用や住宅環境設定、家族指導を含めた複合的なアプローチが必要であることが再認識できた。

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© 2011 日本理学療法士協会
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