理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-430
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ポスター発表(一般)
パーキンソン病患者に対する集団運動プログラムの実施状況と介入効果
開発した姿勢改善運動プログラムを用いて
河野 奈美平 和晃中本 佳代子土佐 和史小口 健阿部 和夫
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抄録

【目的】
パーキンソン病(PD)患者に対する運動療法やパーキンソン体操などの自主トレーニング法が報告され、さまざまな取り組みがなされている。しかしながら、個別での指導に要する時間や体操方法に対する患者の理解、および自宅で自主トレーニングを継続的に行うことの困難さは加齢とともに増加することから、これまで行われてきた運動提供ではPD患者の状況に十分対応されていない。また、PD患者に対する集団での運動プログラムを開発することは、介助量の軽減、運動機能の維持および転倒による二次的障害の軽減による医療費削減の観点からも重要である。そこで、我々は運動教室などの集団で行え、かつ、自宅でも安全に実施可能な運動で、PD患者の特徴である姿勢障害に対して姿勢改善運動プログラムを開発し、第44回、第45回日本理学療法学術大会にて1施設での短期と長期介入における安全性と効果について報告した。
本研究で開発した姿勢改善を目的とした運動プログラムを、他施設においてPD患者に対して集団での運動プログラムを実施し、介入前後の状況について検討したので報告する。
【方法】
厚生労働省PD研究班のPD診断基準を満たし、かつ運動療法を安全かつ効果的に行えることを神経内科およびリハビリテーションの専門医が確認し、プログラムへの参加に同意が得られたPD患者20名、平均年齢72歳(48~90歳)、Hoehn&Yahrのstage2:1名、stage3:15名、stage4:4名を対象とした。
我々が開発したPDに対する集団運動プログラムは、姿勢改善を促すため背中にボールを当てた状態で運動を実施するものである。集団運動プログラム実施指導者は指導方法について説明を受けた理学療法士と作業療法士とし、集団は2クラスに分けて別の曜日に実施した。実施方法は、第44回日本理学療法学術大会にて報告した条件と同様に、週1回8週間の集団運動プログラム介入を行い、介入前と8週目の変化について、身長、体重、握力、Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)を評価した。また、カメラにて立位姿勢を前後左右より撮影し姿勢の変化について評価した。さらに、非運動症状である、やる気スコア、うつスケールおよび疲労について自己記入式調査票を用いて評価した。
統計処理はSPSS15.0J for Windowsにて、対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付き順位検定を用いて行った。
【説明と同意】
対象者には共同演者である神経内科およびリハビリテーションの専門医が面接にて、文書と口頭にて運動プログラムの内容および研究目的を説明し、参加の自由とプライバシーの保護を保証する上で同意が得られた対象者から「研究協力の同意書」に署名してもらった。
【結果】
Hoehn&Yahrのstageはstage3:1名が8週後stage4になったが他の参加者は変化がなかった。平均握力は介入前21.5±6.4、8週後23.8±8.1と有意に増加していた。それ以外の項目において介入前後に有意差はみられなかったが、UPDRS得点は下位項目として日常生活動作8名改善、3名維持、運動能力検査9名改善、1名維持、知的行動8名改善、6名維持していた。肺活量は7名に増加、1秒率も9名に増加傾向がみられた。やる気スコアとうつスケールは半数以上で改善が認められた。立位姿勢は初期時に比べ13名に維持改善傾向が認められた。
【考察】
我々が開発した運動プログラムを用いてstage2からstage4のPD患者を対象として実施し、半数以上に姿勢やUPDRS得点に維持改善があり、10名程度のグループにおいて安全に実施可能であった。集団運動プログラム実施方法としては、運動説明者と見本として運動実施者の2名の指導者で行うことで、より正確な運動指導が可能であった。週1回実施することで姿勢改善傾向は得られるが、疲労評価において12名が初期時に比べ疲労感が増加していたことから、実施頻度について検討の必要が考えられる。今後、これまで集団運動プログラムに参加したPD患者で姿勢改善した患者とそうでない患者について詳細に検討し、指導方法や実施内容、頻度についてより効果的な方法を検討する予定である。
【理学療法学研究としての意義】
開発した運動プログラムが集団で安全にPD患者に対し実施可能であることから、集団で行える運動プログラムマニュアルとして提供できるものと考える。また、医療機関のみならず地域において高齢者やPD患者の介護予防運動プログラムとして利用することで提供範囲を拡大することが可能と考える。

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© 2011 日本理学療法士協会
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