理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-454
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ポスター発表(一般)
電気刺激による刺激幅と電極間皮膚温変化の関係
三和 真人堀本 佳誉伊橋 光二赤塚 清矢真壁 寿神先 秀人竹内 弥彦
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抄録

【目的】電気刺激は、整形外科疾患や中枢神経麻痺の治療として神経・筋の機能回復、痙縮抑制や疼痛軽減などを目的に臨床現場で使用されることの多い治療方法である。特に、脳卒中片麻痺患者の歩行補助手段としてStine RBらによるWalkAidをはじめ、電気刺激療法が行われ、成果が得られている。一方、足関節背屈筋力を発揮するためには電気パルス幅を一定以上にする必要がり、速筋が優先的に刺激されて急速に筋疲労を誘引することは、既に知られるところである。しかし、同時に刺激電極間を中心に電気刺激部位に熱が発生することは知られていない。本研究の目的は電気刺激による筋収縮特性と熱の発生原因の関係を研究するもので、電気刺激強度や皮膚温の変化のから筋疲労を考慮した電気刺激方法を検討することである。
【方法】対象は健常成人9名(年齢24.6歳)とした。実験課題は電気刺激の周波数30Hz、刺激幅0.5msec、1msec、5msecのそれぞれ電気刺激を前脛骨筋に加えるものとした。測定手続きは、前脛骨筋を被検筋として運動点を挟んで電極間距離15cmに4×4cmの刺激電極を貼付した。また舟状骨と中足骨底部に掛かるように筋力計カフを固定し、最大背屈筋力2回の平均から20%MVCを算出して電気刺激による筋張力発揮の設定値とした。刺激時間は1秒、15秒の休憩を1サイクルとし、30分間実施した。刺激On-Offを設定した理由は、Benton の報告から刺激1秒に対して5秒以上の休憩時間であれば筋疲労が起きないと考えたためである。筋疲労の有無を確認するため、刺激電極間に表面電極を貼付して筋電図信号を測定した。休憩15秒のうち、随意収縮を5秒間行うように指示した。皮膚温は、近位刺激電極より5cm上(起始部)と刺激電極間中央(筋腹)の2箇所にプローブを設置し、1分間毎に測定した。また対照実験は同様の手続きで7名の健常者(年齢26.1歳)に随意運動のみ5秒間行うように指示し、皮膚温と表面筋電図を測定した。なお表面筋電図の解析は5秒の前後1秒を除いた3秒間のRMS、中央と平均の周波数スペクトラムをそれぞれ抽出した。統計学処理は、各課題の皮膚温の測定前と最大値を起始部、筋腹のそれぞれ対応のあるt検定を行った。3つの刺激幅で測定前と最大値でそれぞれ分散分析を行った。また筋疲労の分析はそれぞれの刺激幅で実験開始を基準とし、開始時、5分、15分、30分の経過時間で各測定指標の低下率を算出して分散分析を行った。なお有意水準は5%とした。
【説明と同意】対象および対照実験に参加した人には事前に研究の説明し、同意を得て行った。なお本研究は千葉・山形の両県立保健医療大学倫理委員会の承認(承認番号;千葉:2010-004、山形:1006-05)を得て実施した。
【結果】測定前と最大値の間には、起始部、筋腹ともにそれぞれ有意な温度上昇(p<0.05)がみられた。対照実験では起始部、筋腹ともに開始前よりも0.9°C、1.2°Cと上昇がみられたが、電気刺激よりも皮膚温は低かった。刺激幅による皮膚温で最大値の0.5msec、1msecと5msecと間にそれぞれ有意な差(p<0.05)がみられた。起始部では0.5msecで0.8、1msec で1.0、5msecで1.2と開始前よりも温度上昇(°C)がみられた。同様に筋腹でも2.0、1.8、2.5とそれぞれ上昇していた。筋疲労指標RMSの経過時間の低下率(%)は、0.5msec、1msec、5msecで80~100の範囲にあったが差はみられなかった。同様に中央および平均周波数スペクトラムとも低下率に差はみられなかった。
【考察】双極刺激による電極間で筋線維に関係して筋腹で運動点を中心に電流密度が増大し、筋細胞膜内外のNaとKイオン濃度変化がすることも熱を発生する要因と考えられる。更に体内組織の温度上昇によって電気強度が大きくなり、電流が組織内で容易に通るために筋張力が強くなり、疲労を誘発する原因の1つになるものと考えられた。また筋張力に関係する刺激幅で皮膚温に変化が起きるか検討したが、0.5msec以上の刺激幅では温度上昇に差はなかった。刺激幅に関係なく、電気刺激が筋組織の熱産生を引き起こしていることも考えられる。本研究の限界は、一般の臨床で用いられている刺激幅より大きいため、通常の刺激周波数10~30Hzや刺激幅0.2~0.3msecで検討する必要がある。また今回周波数を一定に刺激幅から電気刺激の効果を検討したが、周波数の影響について考える必要がある。
【理学療法学研究としての意義】未報告ではあるが、深部温度も併せて測定しており、電気刺激前後で電極間での35.6°Cから36.7°Cと温度上昇がみられている。今後電気刺激による発生する磁界や磁力線による深部の筋組織に熱が発生するかも併せて検討することが電気刺激療法に必要不可欠であると考えられる。

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© 2011 日本理学療法士協会
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