抄録
【目的】
現在、リハビリテーション医療の分野においては回復期リハビリテーション病棟を中心に、365日勤務体制への変換、充実加算算定の努力など多くの病院で変化が起こっている。
当法人においては新規事業への参入・早朝リハビリテーションの実施・病床変更など、度重なる変化があり、それらに応じた急激な環境の変化が生じている。
我々リハビリテーションの職種の働き方も変化している中、専門職としての自覚を持ち、モチベーションを保ちながら患者満足度を高める事が求められる。
顧客満足度に影響を与える要素として、産業界においては職務満足感があり、医療職においても患者満足度向上のために職員の満足感を知ることは重要であると考えた。
以上の事から職務満足感に影響を及ぼす項目とワークモチベーションと職務満足感の因果関係を知ることにより、患者満足度向上のための手段を考察する事を目的とした。
【方法】
当法人リハビリテーション部職員79名を対象とし、アンケートを配布。回答のあった66名のうちデータに欠損の無い59名(男性25名、女性34名)を分析対象とした。回収率は74.68%であった。
アンケートの内容は基本属性10項目、ワークモチベーション8項目、職務満足感15項目(全体的職務満足感4項目、個々の職場環境に対する満足感11項目)とし、ワークモチベーション、職務満足感は5件法にて実施した。
職務満足感へ影響を及ぼす項目の分析は尤度比による変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を行った。
従属変数はワークモチベーション、全体的職務満足感、個々の職場環境に対する満足感のそれぞれ高い群と低い群とし、独立変数は質問項目とした。
また、モチベーションと職務満足感の因果関係を知るために従属変数を全体的満足感の平均値、独立変数をワークモチベーションの質問項目とし重回帰分析を行った。
統計ソフトはPASW ver.18.0を用い有意水準5%で分析を行った。
【説明と同意】
本調査を実施するにあたっては研究目的を対象職員に対し口頭、および書面にて説明し、その際、個人が特定されることの無いようプライバシー保護に十分配慮し、データは統計的に処理することを伝えた。
アンケートの回収をもって本研究への同意を得る事とした。
【結果】
回答者の基本属性について、職種は理学療法士32名、作業療法士19名、言語聴覚士8名。年齢は25.3±2.9歳、経験年数は3.1±2.1歳であった。
多重ロジスティック回帰分析の結果、「職場の同僚は協力的で満足している」の質問項目(オッズ比:7.026、95%信頼区間:2.089‐23.629)と全体的職務満足感の間に有意な関連を認めた(p<0.02)。
モデルχ2検定の結果はp<0.01、HosmerとLemeshowの検定結果はp=0.707、判別的中率は74.6%であった。
また、重回帰分析の結果、モチベーションが職務満足感に影響している因子は「仕事にうちこむと、終わった後で満足感をおぼえますか」の質問項目が有意に影響していた(p<0.01)。標準偏回帰係数:0.435、分散分析の結果は有意で(p<0.01)決定係数R2:0.176であった。
【考察】
分析の結果から、「職場の同僚は協力的で満足している」の項目が全体的職務満足感に最も影響していると考えられたため、チーム医療を進める中で職場での人間関係を良好に保つ事が、職務満足感を向上させると示唆された。
特に回復期リハビリテーション病棟においては365日体制や早番実施の為、継ぎ目のないリハビリテーションの提供には周囲の職員の協力が欠かせない。
コミュニケーションを密にとり、互いに協力体制を保ち続ける事が職務満足感を向上させると考える。
ワークモチベーションに関しては「仕事にうちこむと、終わった後で満足感をおぼえますか」の項目が全体的職務満足感に影響している因子であった。
モチベーションを保つためには、日々の充実感が大切であり、環境の変化や働き方の変化があっても一日毎の目標を持ち、達成する事でワークモチベーションを保つ事が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
経験年数の浅い理学療法士が部門管理を任されることが増える一方、リハビリテーション職員数は増加の一途をたどっている。組織の形態も変化し、経験側から部門管理をすることは困難である。
そのような中、職員のモチベーションと職務満足感の関わりを知り、職務満足感向上の要因を検討し部門管理をする事で患者満足度の向上を図る一助とする。