理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: OS3-077
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専門領域別口述発表
リハ病床を持たない特定機能病院の理学療法部門に求められる役割
当院の退院支援事情からの1考察
安井 健横田 一彦芳賀 信彦長野 宏一朗
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抄録
【目的】
当院は病床数1210(一般1150、精神60)からなる特定機能病院で、リハ病床を持たない。平成15年5月よりDPC制度を導入し、平均在院日数は年々短縮するとともに病床回転率は上昇の一途を辿っている。リハ部理学療法部門や地域医療連携部(以下、連携部)への依頼件数も同様に増加し、退院支援の重要性については論を待たない。
そこで、当院全体の傾向を把握するとともに、理学療法(以下、PT)と連携部の退院支援に関わる情報を分析することで、PTの役割を明らかにできればと考えた。
【方法】
平成22年6月1日~8月31日の3ヶ月間に当院を退院した、PT介入499例および連携部介入255例を調査対象とした。そのうち、自宅退院したPT介入全例(374例)に対して、担当理学療法士へのアンケート調査と聞き取り、および電子カルテ調査にて在宅サービスの利用状況と入院中の在宅支援への介入度に関する情報を得、連携部介入ケースと合わせて分析した。なお、ここでいう在宅支援とは、(1:ケアマネージャーやサービス担当者、病棟スタッフ等を交えた多職種によるカンファレンスに出席した2:カンファレンスには参加しないがケアマネージャーやサービス担当者と直接コンタクトをとった3:制度の具体的な利用について担当ケースや依頼科に助言した)の3パターンを設定し、介入度は数字順に低くなるとした。また、当院では整形外科からのPT処方は直接オーダー制であり、さらに今回のPT介入例全体の38.3%(自宅退院例の44.9%)を占めていたため、整形外科依頼分を分けた分析も行った。
【説明と同意】
後ろ向きの疫学研究に関して、個人情報が特定されない範囲においてカルテ等の情報を研究に利用することは、当院倫理委員会の承認を得られている。
【結果】
上記期間の自宅退院率は、病院全体・PT部門・連携部でそれぞれ96.3%・74.9%・49.0%であった。PT介入全例(499例)のうち、連携部介入があったのは26.7%(133例)であったが、自宅退院例(374例)に限定すると14.7%(55例)となり、整形外科からの依頼分を除くと連携部介入の割合はそれぞれ10%程度上昇した。整形外科から連携部への依頼の90.0%は転医依頼であり、結果としての転医率も75.0%と高値であった。自宅退院例に関して、介護保険や障害者自立支援法(以下、支援法)による在宅サービスの利用は自宅退院例全体の29.9%にあり、今回の入院中に新規導入・見直しを行ったケースはそのうちの35.7%(自宅退院全体の10.7%)であった。整形外科を除くと、在宅サービス利用率は47.1%となったが、新規導入・見直しの割合は38.1%であった。在宅サービスの中で支援法利用の割合は8.9%で、そのうちの40.0%は小児科のケースであり、その80.0%は新規導入であった。在宅支援へのPTの介入度について、介入率は自宅退院例全体の16.8%であり、そのうちの82.5%は上記3のような軽度の介入で、1または2のような深い介入は17.5%であった。整形外科を除くと介入率は28.2%に上がるが、1または2の介入は19.0%であった。担当した理学療法士により、在宅サービスの利用状況や在宅支援への介入状況には差があった。
【考察】
退院支援の中でも、PT部門には在宅支援が、連携部へは転院支援の役割が大きいと言えるため、我々は介護保険や支援法での在宅サービスの利用に関して精通しておく必要がある。ただ、整形外科領域に限定すると在宅支援の役割は比較的低く、これらはPTの業務分担や専門性を考慮する上での参考になると考えられる。在宅支援への介入度に関しては、診療業務との兼ね合い、他職種からの視点を反映させた上でのPTの業務内容の見直しなど、更なる分析と検討が必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
このような分析が病院の機能別に行われ、今後、病院の機能に応じた理学療法士の役割の相違が明らかとなっていくことを期待する。我々の臨床業務は診療報酬制度や社会背景の変化に大きく影響を受け、ニーズに柔軟に対応していくことが求められる。これはまた、業務内容の検討に留まらず、理学療法士の教育体制や専門性を考える上でも重要である。
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© 2011 日本理学療法士協会
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