理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 口述
スタティックストレッチングが各指標に及ぼす効果の持続時間について
波多野 元貴, 鈴木 重行, 松尾 真吾, 片浦 聡司, 岩田 全広, 坂野 裕洋, 浅井 友詞
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Aa0134

詳細
抄録
【はじめに、目的】 これまで、スタティックストレッチングの即時効果を検討している先行研究において、効果の持続時間はほとんど検討がなされていない。少数の先行研究からは、大半の評価指標において、ストレッチングの効果の持続時間は数十分以内であることが示唆されるが、これらの結果については、ストレッチング時間や強度、対象筋などの設定の違いから、先行研究間の単純な比較は困難であり、多くの指標について同時に、かつ詳細に検討している先行研究はない。そこで、同一条件下で、各指標に及ぼす効果の持続時間を詳細に検討することで、ストレッチングによる正の効果(伸張時の抵抗の減少、ROM増大等)と負の効果(筋力の低下等)がそれぞれどの程度持続していくかが明らかとなれば、より目的に沿った、有効なストレッチングを実践するための一助となると考えられる。そこで、本研究は、ストレッチングが各指標に及ぼす効果の持続時間を明らかにすることを目的とした。【方法】 被験者は健常学生20名(男性9名、女性11名、平均年齢20.5±1.2歳)とし、対象筋は右ハムストリングスとした。被験者は股関節および膝関節をそれぞれ約110°屈曲した座位(以下、測定開始肢位)をとり、等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)を用いて測定を行った。ストレッチングは300秒間、大腿後面に痛みの出る直前の膝関節伸展角度で保持し、ストレッチング開始時と終了時の静的トルクを比較して、低下していることを確認した。評価指標は、stiffness、最大動的トルク、ROM、筋力の4種類とした。stiffness、最大動的トルクは測定開始肢位から膝関節最大伸展角度(大腿後面に痛みの出る直前)まで5°/秒の角速度で他動的に伸展させた時のトルク-角度曲線より求めた。stiffnessは、ストレッチング前の膝関節最大伸展角度からその50%の角度までの範囲で回帰直線を算出し、その傾きと定義し、最大動的トルクはトルクの最大値とした。ROMは膝関節最大伸展角度とした。筋力は、測定開始肢位での膝関節屈曲の最大等尺性筋力とした。実験はまずstiffness、最大動的トルク、ROM、筋力を測定し、60分の休憩後、ストレッチングを行い、同時に静的トルクを測定した。ストレッチング後は、測定開始肢位にて10分、20分、30分のいずれかの安静を取った(以下、10分群、20分群、30分群)。安静後は、再びストレッチング前と同じ手順でstiffness、最大動的トルク、ROM、筋力を求め、ストレッチング前後の値を比較した。被験者は異なる安静時間を含めた全ての実験を24時間以上の間隔を設け行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は名古屋大学医学部生命倫理審査委員会(承認番号:11-510)および日本福祉大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会(承認番号:11-07)の承認を得て行った。実験を行う前に、被験者に実験内容について文書及び口頭で説明し、同意が得られた場合にのみ研究を行った。尚、被験者が実験の中止を希望した場合は、速やかに実験を中止した。【結果】 静的トルクは全ての群で、ストレッチング後に有意に低下した。stiffnessは、ストレッチング後に20分群のみ有意に低下した。最大動的トルクおよびROMは、全ての群で有意に増加した。筋力は、全ての群で有意に低下した。【考察】 静的トルクの低下から、ストレッチングは全ての群で同様に行えたと考えられ、筋が伸張され、Ib抑制が関与したと推察する。stiffnessは先行研究より、筋腱複合体の粘弾性を反映すると報告されている。stiffnessの結果より、筋腱複合体の粘弾性など、力学的特性の変化は20分から30分後までには消失する可能性がうかがえた。最大動的トルクは先行研究より、痛み閾値に関連するstretching toleranceを反映すると報告されている。本実験では最大動的トルクおよびROMにおいて効果が30分以上持続することが示唆された。したがって、筋腱複合体の力学的特性の変化が持続していない場合にも、ROMの増加が保たれており、これは主に痛み閾値の上昇とともにstretching toleranceが増加したことが要因であると推察する。また、筋力はストレッチング後30分以上低下した状態が持続することが示唆された。但し、この筋力低下は統計学的に有意な差ではあるが、その割合は5%に満たないものであり、目的によって重要性が異なると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究から、評価指標ごとに効果の持続時間が異なることや、効果の主たる要因が経時的に変化することが示された。このことから、理学療法士がストレッチングを目的に沿った、より有効なストレッチングを施行するには、各指標に対する効果の持続時間への考慮が必要となると考える。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top