理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
手すりの縦・横の違いが片麻痺者の健側下肢荷重率へ及ぼす影響
田宮 創江口 勝彦高橋 正明
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p. Aa0174

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抄録
【はじめに、目的】 従来から心肺機能の評価にはトレッドミル,自転車エルゴメータ等の負荷装置を利用した運動負荷試験が用いられてきたが,近年,場所や機器の有無に制限されない起立運動による方法(以下,反復起立運動負荷法)が検討されている. 反復起立運動負荷法は,基本動作である椅子からの立ち上がり動作を負荷に用いる方法で,椅子の高さと立ち上がり動作の頻度を変化させることで負荷量を調節する方法である.先行研究の多くは両上肢を胸の前に組んだ姿勢で行っているが,片麻痺者やバランス能力が低下している症例では困難であり,手すりの使用により安全に施行することが可能になると考える. また,一般的に中等度以上の片麻痺者の立ち上がり動作は,患側での支持性が弱いことから健側指向であることが多く,健側下肢筋の疲労を招きやすいと考える.これに対し,手すりを使用することで,健側下肢荷重率,健側下肢への負担を低減させることが可能になり,重度片麻痺に対する反復起立運動負荷法の臨床応用につながる可能性があるのではないかと考える. 一方,手すりには,廊下などで移動時に使用する横手すりと,トイレ・浴室等で起立時に使用する縦手すりがある.しかしながら,立ち上がり動作時における,下肢負担の手すりによる差異は明らかではない.  本研究の目的は,反復起立運動負荷法の臨床応用に資する為に,手すりの違いが下肢負担の軽減に及ぼす影響を明らかにすることであり,今回は,脳血管障害片麻痺者を対象に,縦および横手すりを用い,立ち上がり動作時における健側下肢荷重率を検討した. 【方法】 対象は,介護老人保健施設を利用している脳血管障害片麻痺者6例(男性1例,女性5例,平均年齢75.2±10.9歳,平均発症後期間85.3±19.2ヵ月)であった.内訳は左片麻痺2例,右片麻痺4例,下肢ブルンストロームの回復段階はステージIIが3例,IIIが3例であった.また,立ち上がり動作は自立,歩行が可能であるが,日常的な移動には車いすを使用しており,下肢に重篤な整形外科疾患がない例とした. 起立動作開始肢位は,対象者の腓骨頭の高さの椅子に,座面前端が大転子から大腿骨外側上顆までの距離の60%の位置になるように座らせ,膝関節屈曲100°(健側),90°(患側)で,足は肩幅に開き健側上肢にて手すり把持とした.また,健側下肢下に高さ20mmのデジタル体重計を置き,患側下肢下および座面も合わせて補正した. 横手すりは一般的な公共施設で用いられる高さである700mm-800mmの中間の750mmとした.身体からの距離は,先行研究と同様に上肢を前方挙上し第3指が手すり中央部に触れる位置とした.縦手すりはトイレ等に設置する基準に合わせ,座面中央から健側側方に350mmで,前方で大腿骨外側上顆の位置とした. 立ち上がりの動作速度は,1動作5秒(起立2.5秒,着座2.5秒)とし,立位は健側膝関節を完全伸展させた後,直ちに着座するよう指示した. 横手すりと縦手すりの2条件にてそれぞれ3回ずつ立ち上がり動作を行わせ,デジタルビデオカメラにてサンプリング周波数10Hzにて健側下肢荷重量を記録した.記録した数値を各対象者の体重で除し,健側下肢荷重率(%kg)とした.立ち上がり動作時間をX,健側下肢荷重率をYとしてトレンドを描き,peak値および積分値を算出した.得られたデータは統計解析ソフトR2.8.1(Free software)を用い,横手すりと縦手すりの2条件について対応のあるt検定にて分析した.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象は本研究の目的・方法・参加による利益と不利益などの説明を十分に受け,全員自らの意思で参加した.また,本研究は本学研究倫理委員会の規定に基づき,大学院研究倫理審査により,承認され実施した.【結果】 健側下肢荷重率の積分値は,横手すり303.7±29.4,縦手すり253.7±35.3と,条件間で有意差を認めた(p=0.016,95%信頼区間:13.78-86.35).peak値は,横手すり73.9±7.5%kg,縦手すり81.7±6.8%kgと,有意差を認めた(p=0.003,95%信頼区間:3.92-11.61). 【考察】 横手すりに比べ縦手すりを使用した方が健側下肢への荷重を減少させた.また,手すりによる立ち上がりやすさの違いについて,6例中4例が縦手すりの方が立ち上がりやすかったと答えた.縦手すりの使用が,立ち上がり動作時における健側下肢への負担を低減したと考える.本研究の結果より,横手すりによる身体重心の前方移動の補助よりも,縦手すりによる身体重心の上方移動の補助が立ち上がり動作時の下肢負担を軽減させることが明らかになった.【理学療法学研究としての意義】 縦手すりの使用により,片麻痺者の健側下肢荷重率を軽減することが可能であり,縦手すりが反復起立運動負荷法の臨床応用に利用できる可能性がある.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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