理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
変形性膝関節症患者の歩行時の酸素動態の特性について
─変形性膝関節症患者の歩行時の酸素動態の特性─
後藤 強三浦 哉出口 憲市
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p. Aa0865

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抄録
【目的】 現在,高齢者人口の増加とともに変形性膝関節症 (膝OA) に代表される膝の変性疾患が増加しており,我が国の膝OA人口は1,200万人に及び,65歳以上の高齢者の約13%が罹患していると報告されている.また,膝OA患者は変形性股関節症などの合併症としても頻度の高い疾患であり,膝痛のために身体活動量の減少,肥満および生理・運動機能の低下を来たし,その結果として生活機能全般が低下することにより,徐々に重篤な要介護状態に陥ることが予測される.これまでに膝OA患者を対象に歩行時の表面筋電図,加速度計,床反力計および三次動作解析装置などのバイオメカニクス的報告は多数存在しているが,筋における循環および代謝の観点からの検討は少ない.また,整形外科疾患である膝OA患者の歩行時の運動処方は確立されておらず,近赤外分光法 (NIRS) を用いて筋の循環および代謝面から酸素動態について検討することにより,膝OA患者の歩行時の酸素動態の評価および基礎的データの証明をすることができる. そこで本研究では,膝OA患者の有効な治療および評価法を確立するための基礎的データを得るために,歩行時の酸素動態の特性を明らかにすることを目的とした.【方法】 対象者は,膝OA疾患を有する中高齢者7名 (膝OA群) および疾患を有しない中高齢者7名 (対象群) であった.彼らは,自由歩行速度測定後,トレッドミル上で静止立位2分間の安静後,自由歩行速度の75%の速度 (75%FGS) でトレッドミル歩行2分間,自由歩行速度 (100%FGS) でトレッドミル歩行2分間および自由歩行速度の125%の速度 (125%FGS) でトレッドミル歩行2分間の順で3条件のトレッドミル歩行を2分間の回復を挟みながら連続して合計14分間実施した.なお,回復時の姿勢はトレッドミル上で静止立位であった.測定の際には,前脛骨筋 (TA) および腓腹筋内側 (GM) に近赤外分光法のプローブを装着し,酸素化ヘモグロビン (oxy-Hb) および血液量 (BV) の変化を連続的に測定して,各条件の歩行開始10秒前の平均値から歩行終了10秒前の平均値の差 (Δ) を算出した.【倫理的配慮】 本研究は,徳島大学総合科学部人間科学分野における研究倫理委員会の承諾を得たものであり,対象者には事前に文章および口頭にて研究内容・趣旨,参加の拒否・撤回・中断などについて説明し,承諾を得た後に研究を開始した.【結果および考察】 膝OA群のTAにおけるΔBVは,75%FGSで8.4±6.7μmol,100%FGSで13.8±7.4μmolおよび125%FGSで9.7±6.7μmol,GMでは,それぞれ2.8±3.4μmol,3.3±3.5μmolおよび2.8±2.7μmolであり,各条間に有意な差は認められなかった.対象群のTAにおけるΔBVは,それぞれ9.9±3.7μmol,3.7±10.6μmolおよび9.7±6.7μmol, GMでは,それぞれ6.7±6.0μmol,8.0±7.5μmolおよび8.8±7.6μmolであり,各条件間に有意な差は認められなかった.膝OA群のTAにおけるΔoxy-Hbは,75%FGSで8.0±6.0μmol,100%FGSで10.3±7.2μmolおよび125%FGSで11.2±8.0μmol,GMでは,それぞれ5.4±5.2μmol, 8.2±8.8μmolおよび8.4±9.0μmolであり,各条件間に有意な差は認められなかった.対象群のTAでは,それぞれ7.6±3.6μmol, 8.6±3.9μmolおよび8.2±4.0μmol,GMでは,それぞれ4.5±4.1μmol, 9.2±8.5μmolおよび9.7±8.4μmolであり,GMについて75%FGSと125%FGSとの間に有意な差が認められた (p<0.05).このように膝OA群と対象群との間で歩行速度の上昇に増加に伴う酸素動態の違いが生じた原因として,膝OA群では,下肢のアライメント不良が生じることにより,下腿部の筋ポンプ作用を効率的に行うことができず,酸素供給不足となったためにΔBVおよびΔoxy-Hbともに条件間で著しい変化が認められなかったと考えられる.一方,対象群におけるTAは歩行周期全般で筋活動が生じるために,Δoxy-Hbの著しい増加は認められなかったが,GMにおいては,下肢における筋ポンプ作用の中心を担うことで,静脈還流の促進および動脈血流量の増加が起こり,酸素供給が効率的に行うことによりΔoxy-Hbの著しい増加が認められたと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 本研究を基に膝OA患者の歩行に対する運動処方を考えた場合, GMの歩行周期の特性に応じて臥位もしくは立位での求心性収縮および遠心性収縮のトレーニングを行い,最終的には実用的な歩行に繋げていく必要があると考えられる.今後,バイオメカニクス的研究と併行し,体幹および上肢の骨格筋における代謝および循環を踏まえた包括的な評価および治療法の確立も同時に必要不可欠であると考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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