理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
変形性膝関節症患者における大腿四頭筋の量的・質的分析
谷口 匡史福元 喜啓建内 宏重塚越 累高木 優衣後藤 優育大塚 直輝小林 政史市橋 則明
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p. Aa0866

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抄録
【目的】 変形性膝関節症(以下、膝OA)患者では、一般に大腿四頭筋筋力の低下を呈することが多く、歩行機能やADL制限の一因となる。近年、超音波画像診断装置を用いた骨格筋の構造・形態的特徴の定量的評価法が普及し、筋厚だけでなく筋輝度測定の有用性(Pillen 2006)が報告されている。筋輝度は骨格筋内の脂肪・結合組織など非収縮組織の比率の増加といった筋の質的変化を表しており、筋厚減少だけでなく筋輝度の増加も筋力低下と関連するとされている(Fukumoto 2011)。膝OA患者では大腿四頭筋の量的変化だけでなく質的変化が生じていると考えられるが、健常者と比較した大腿四頭筋の筋厚・筋輝度の変化は明らかではない。本研究の目的は、膝OA患者における大腿四頭筋の量的・質的変化を明らかにすることである。【方法】 膝OA患者17名(膝OA群;年齢62.0±7.6歳、身長154.1±5.0cm、体重55.4±5.6kg)および健常女性16名(健常群;年齢57.7±6.4歳、身長155.9±6.0cm、体重52.4±6.3kg)を対象とし、大腿四頭筋筋厚および筋輝度の測定を行った。膝OA群は、全員両側OAであり、疼痛優位側を解析対象とした。Kellgren–Lawrence (K-L)分類は、GradeI-IIが9名、GradeIII-IVが8名であり、変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)は平均16.9±11.8点であった。超音波診断装置(GEヘルスケア社製LOGIQ Book e)を使用し、安静背臥位における大腿四頭筋の横断画像を撮影した。8MHzのリニアプローブを用い、ゲインなど画像条件は同一設定とした。大腿直筋(RF)および中間広筋(VI)は、上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結んだ直線の中点、外側広筋(VL)は大転子と膝関節外側裂隙を結んだ直線の中点、さらに内側広筋(VM)は膝蓋骨上縁より斜め45度上方5cmの位置を撮影部位とした。得られた横断画像から各筋の筋厚(cm)を計測し、また画像処理ソフト(Image J)を使用して、各筋の領域における筋輝度を算出した。筋輝度は0から255の256段階で表現されるグレースケールで評価され、高値を示すほど白色部位であることを意味する。健常群における各筋の筋厚・筋輝度の平均値を基準値として、膝OA群における各筋の測定値を増加・減少率として算出した。統計学的検討として、膝OA群と健常群における筋厚および筋輝度の比較には対応のないt検定を使用した。また、膝OA群における各筋の筋厚・筋輝度の増加・減少率の比較には、kruskal-Wallis検定および多重比較を用いた。有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究は、倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には本研究の目的を十分に説明し、書面にて同意を得た。【結果】 筋厚は、膝OA群におけるRF(健常群; 2.05±0.32cm, 膝OA群; 1.73±0.18cm)、VI(健常群; 1.84±0.44cm, 膝OA群; 1.43±0.31cm)、VM(健常群; 2.05±0.37cm, 膝OA群; 1.48±0.28cm)が健常群に比べて有意に低下していたが、VL(健常群; 1.71±0.47cm, 膝OA群; 1.80±0.38cm)には群間の差がなかった。健常群における筋厚の平均値に対して、膝OA群の筋厚減少率が小さい順にVL;105.3%、RF;84.3%、VI;77.6%、VM;72.3%であり、VLは他の3筋に対して有意に高値を示した。また、筋輝度は膝OA群のVMで健常群よりも有意に高値(健常群; 81.2±20.3, 膝OA群; 98.5±13.7)を示したが、その他の筋では差がなかった。さらに、健常群における筋輝度の平均値に対して、膝OA群の筋輝度はVM;121.3%、VI;110.9%、VL;103.6%、RF;102.9%の順に増加率が高く、VMはVL、RFに対して有意に高値であった。【考察】 膝OA群では健常群に比べてRFやVI、VMの筋萎縮が生じていたが、VL筋厚は維持されていた。また、膝OA群における大腿四頭筋の中でもVLは他の3筋に比べて有意に筋厚が維持されていることが示唆された。膝OA患者では歩行時VLの筋活動が高いことから、VLは量的に維持されやすい可能性が示唆された。また、VMでは健常群と比べ筋輝度が有意に高かったことから、筋萎縮だけでなく非収縮組織比率の増加といった筋の質的変化も生じていることが明らかとなった。【理学療法研究としての意義】 本研究では、膝OA患者において大腿四頭筋の量的減少だけでなく、内側広筋の筋輝度増加が明らかとなった。膝OA患者における大腿四頭筋の量的変化を評価するだけでなく、質的変化にも着目する必要性を示した。今後、大腿四頭筋筋力と筋厚・筋輝度の関連を検討していく必要がある。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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