理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
下肢荷重率と片脚立位時間の関係
─高齢入院患者における検討─
加嶋 憲作馬渕 勝中谷 京宗河邑 貢山﨑 裕司
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p. Aa0870

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抄録
【はじめに、目的】 片脚立位時間は測定が簡便なため,臨床で広く利用されている.しかし,片脚立位能力は下肢筋力の影響を強く受けることが指摘されており,測定困難な症例が少なからず存在する.我々は,新たなバランス評価法として,市販体重計を用いた下肢荷重率の測定法を考案し,下肢支持性や歩行能力を反映する有益な指標であることを報告してきた.下肢荷重率の測定は,両足底を接地させて実施させる点で片脚立位時間に比較して重症例にも対応できるメリットがある.本研究では,下肢荷重率測定の臨床応用を目的として下肢荷重率と片脚立位時間の関連について検討した.【方法】 対象は,高齢入院患者143例(男性87例,女性56例)である.中枢神経疾患や明らかな荷重関節の整形外科疾患,認知症を有する者は対象から除外した.下肢荷重率の測定は,市販の体重計2枚に左右の脚をのせた立位で行った.片側下肢に最大限体重を偏位させるように指示し,5秒間安定した姿勢保持が可能であった荷重量(kg)を体重(kg)で除し,その値を下肢荷重率(%)とした.片脚立位の測定時間は30秒を上限とし,各脚2回の測定のうち最高値を採用した.左右脚の平均値を算出し,5~10秒未満,10~30秒未満,30秒以上の3段階に区分した.次に下肢荷重率を60%未満,60~70%未満,70~80%未満,80~90%未満,90%以上に区分し,それぞれ3段階に区分した片脚立位が可能な症例の占める割合を比較した.統計解析には一元配置分散分析およびBonferroni法を用い,危険率5%を有意水準とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,研究の内容と目的を説明し,同意を得た後に測定を実施した.【結果】 片脚立位5~10秒未満の症例(23例)の割合は,下肢荷重率60%未満,60~70%未満,70~80%未満,80~90%未満,90%以上の順に,0%,0%,13.0%,43.5%,43.5%であった.片脚立位10~30秒未満(40例)では,0%,0%,0%,27.5%,72.5%,片脚立位30秒以上(19例)では,0%,0%,0%,10.5%,89.4%であった.いずれの片脚立位時間も下肢荷重率の低下に伴い,片脚立位を遂行できた症例の割合は減少する傾向にあった.下肢荷重率70%未満では5秒間の片脚立位,下肢荷重率80%未満では10秒間の片脚立位が全例で遂行不能であった.下肢荷重率は片脚立位5~10秒未満と10~30秒未満及び30秒以上の間に有意差を認めた(p<0.05).本研究の対象例のうち24例は片脚立位動作自体が不可能であったが,下肢荷重率の測定は24例ともに可能であり,その下肢荷重率は50~76.1%に分布した.【考察】 下肢荷重率の低下に伴って,片脚立位を遂行できた症例の割合は減少した.片脚立位時間が5秒以上遂行できた症例の割合は,下肢荷重率80%から顕著に低下し,下肢荷重率70%未満では遂行不能であった.下肢荷重率はバランス能力の評価法として,片脚立位時間と同様の傾向を示すものと考えられた.また,143例中24例において片脚立位時間の測定が不能であったのに対し,下肢荷重率の測定は全例で可能であった.このことから,片脚立位時間の測定が困難な重症例のバランス評価方法として下肢荷重率の活用可能性が示唆された.重症例に対するバランス評価方法としての下肢荷重率の有用性については,片脚立位が困難な症例を対象として,動作能力や他のバランス指標との関連性を検討することで明らかにしていく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 下肢荷重率は,これまで評価が困難であった重症例に対しても適応できるバランス評価方法として期待できる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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