理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
下肢の荷重量調節の正確性に対する上肢の荷重量調節の影響
渡邉 観世子谷 浩明石原 正規樋口 貴広今中 國泰
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キーワード: 体重移動, 荷重, 相関
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p. Aa0871

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抄録
【はじめに、目的】 下肢の骨折や靭帯損傷などに対するリハビリテーションでは、回復段階に合わせた荷重量を患側下肢で調節する練習を通して早期の歩行動作の自立を目指している。この体重移動練習では、平行棒や杖により上肢の支持を用いながら下肢の荷重量を調節することが多く、下肢の荷重量調節には上肢の操作が少なからず影響していると考えられる。本研究では、平行棒での上肢支持を伴う左右への体重移動課題を用い、上下四肢の各荷重変化とそれら四肢間の相関から体重移動における荷重量調節を検討した。さらに四肢間相関、特に上肢との相関が下肢の荷重量調節の正確性にどのように関与するかについても推察した。【方法】 若年健常成人23名(男性10名、女性13名)に対し、体重移動方向(左側、右側)および調節する荷重量(体重の1/3、2/3)を対象者内要因とした4条件の体重移課題を呈示した。それぞれの体重移動課題の1試行は3秒間で行うこととし、各条件10試行行った。体重移動課題遂行中には下肢の荷重量を2枚のフォースプレート(Kyowa 特注)、上肢の荷重量を2つのロードセル(Kyowa LUR-A-1KNSA1)により計測した。四肢の荷重変化に伴う四肢間相関については、3秒間の荷重変化データの10試行の平均荷重量を用いて、2肢間ずつ(6組)の相関係数(負相関は荷重量増減調節を示す)を対象者ごとに各条件で求めた。体重移動課題の正確性は、目標荷重量(体重の1/3もしくは2/3)からの体重あたりの偏倚性(CE/w)、変動性(VE/w)、および総合誤差(RMSE/w)を指標とした。さらに、四肢間相関と正確性との関係を各四肢間相関係数(Fisherのz変換値)と正確性指標との相関分析により検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は所属機関倫理委員会の承認を受け(承認番号10-41)、対象者には研究目的と計測内容について口頭と紙面にて説明し、同意書の署名をもって同意を確認した。【結果】 四肢間の荷重変化に伴う四肢間相関は、いずれの条件でも両下肢間に-0.99前後の高い負相関を認めたが、その他の相関は条件により異なっていた。特徴的な結果は(1)左側1/3移動条件では左下肢への体重移動(左下肢荷重量の増加、右下肢荷重量の減少)とともに左上肢の荷重量が減少し、左上下肢間の相関および右下肢-左上肢間の相関とCE/wとの間に有意な相関を認め(それぞれr = -0.44, p < 0.05、r = 0.44, p < 0.05)、左上肢が正確性に関与していることが示唆された。(2)左側2/3移動条件では左下肢への体重移動(右下肢荷重量の減少)とともに右上肢の荷重量が減少し、右上下肢間の相関とCE/wとの間に有意な相関(r = -0.43, p < 0.05)、さらに両上肢間とCE/wとの間に有意な相関(r = -0.42, p < 0.05)を認め、右上肢が正確性に関与していることが示唆された。一方、右側体重移動条件では、いずれも四肢間相関と正確性との間に有意な相関を認めなかった。【考察】 左側1/3移動条件では、左上下肢間及び右下肢-左上肢間相関が高いほど左下肢の荷重量調節の正確性が低く、左側2/3移動条件では右上下肢間及び両上肢間相関が高いほど左下肢の荷重量調節の正確性が低いことが分かった。つまり、左側1/3移動条件では左上肢、左側2/3移動条件では右上肢が体重移動調節に関与すると正確な荷重量調節が妨げられると推察された。これらの上肢の荷重変化は、単に上肢のみの調節だけではなく、左側1/3条件では体重移動に伴って上半身(上部体幹や頭部)を右側へ、また左側2/3条件では上半身を左側へ傾斜させるという上半身の姿勢調節も反映していると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果から、臨床における荷重量調節の指導方法についての示唆を得た。すなわち左下肢の障害において、回復段階の初期(1/3荷重を練習する時期)には左上肢荷重量の減少(もしくは右側への上半身の傾斜)、回復段階の後期(2/3荷重を練習する時期)には右上肢荷重量の減少(もしくは左側への上半身傾斜)の関与が下肢の荷重量調節を阻害する可能性があるため、これらの上肢や上半身の傾斜に依存しないような調節方略を指導する必要があることを示唆している。本研究では体重移動に伴う荷重量調節について、健常者が示す基本的な特性が明らかとなり、今後は実用的な指導方法の提案に向けて、臨床場面での検討が必要と思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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