理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
歩行準備状態における大脳皮質活動の変化-fNIRS研究-
植田 耕造信迫 悟志藤田 浩之大住 倫弘草場 正彦森岡 周
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キーワード: 歩行, 大脳皮質, fNIRS
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p. Aa0887

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抄録
【目的】 運動開始前に大脳皮質が活動していることは周知の事実である.歩行開始前においても運動前野,補足運動野などの活動が増加し,この活動は歩行プログラムの生成に関与すると考えられ,歩行速度の増加や,言語指示による歩行開始の予期により変化することが報告されている(Suzuki 2004,2008). 理学療法の臨床では歩行パターンを随意的に変化させることを対象者に要求することがあり,このためには歩行開始前に歩行プログラムの修正を高次運動野が行う必要があると考えられる.しかし,歩行パターンを変化させる時や,それを反復した時の歩行開始前(歩行準備状態)の大脳皮質活動の変化は報告されていない.揃い型歩行(Step-to gait; STG)は正常歩行(Normal gait; NG)から歩行パターンを随意的に変化させる必要があり,異なる歩行様式である (Drerup 2008).本研究の目的は,NGからSTGへ歩行様式を変化させる時や,STGを反復した時の歩行準備状態の大脳皮質活動の変化を調べることである.【方法】 健常者10名(男性8名,女性2名,平均年齢22.7±2.1)を対象とし,3条件の歩行動作を行ってもらい,歩行準備状態の脳活動を機能的近赤外分光イメージング(fNIRS,FOIRE-3000,Shimadzu)にて計測した.歩行課題は,30mのNG,15mのSTG(STG1),STG1と振り出す足を逆にしたSTG (STG2)の3条件を,各3回ずつ,NG,STG1,STG2の順序で,全て任意速度にて行った.STG1は,5名は右足,残り5名は左足から振り出した.STGの説明は,実験者が動作を行い,被験者に観察してもらう形で実施した.計測は,安静立位20秒後に各歩行課題を行った.NIRSは,横5×縦6でファイバーを配列し,左右前頭から頭頂を含む49チャンネルで測定し,測定項目は酸素化ヘモグロビン濃度長(oxy-Hb)とした. 解析に用いる時間帯は,各歩行課題安静立位時の3秒から8秒中の5秒間(安静時)と歩行開始前の5秒間(歩行準備状態)としたが,血液動態反応は関連する脳神経活動から数秒遅れるため(Jasdzewski 2003),実際のデータ抽出時は,それぞれ3秒遅らせたデータを抽出した.各歩行課題において,effect size[ES=(歩行準備状態のoxy-Hb平均値-安静時のoxy-Hb平均値)/安静時のoxy-Hb標準偏差]をチャンネルごとに算出した後,左右感覚運動野(SMC),補足運動野(SMA),左右運動前野(PMC),左右頭頂領域(PC)の7領域に分けROI(region of interest)解析を実施した.各領域において,NGとSTG1,STG1とSTG2の条件間比較をWilcoxonの符号付順位検定を用いて実施した.統計学的分析には統計ソフトR2.8.1を使用し,統計学的有意水準を5%とした.【説明と同意】 全ての被験者に対して,研究内容を紙面および口頭にて説明し,同意を得た.なお本研究は畿央大学研究倫理委員会(受付番号H23-12)にて承認されている.【結果】 NGに比べSTG1では,左右PMCのみ有意なES値の増加を示し(P<0.05),他の領域に有意な差は認められなかった.STG1に比べSTG2では,左右PMC(P<0.01)と左右SMC(P<0.05)で有意なES値の低下を示し,他の領域に有意な差は認められなかった.【考察】 NGからSTGへ歩行様式を変化させる時には左右PMCの活動が有意に増加した.精密な下肢制御と姿勢制御を必要とする歩行をイメージする課題ではPMCの活動が増加する (Bakker 2008)ことからも,歩行様式の変化にはPMCの関与が考えられる.実際の歩行では,このPMCの活動は歩行準備状態から生じていることが本研究の結果から示された.これは歩行プログラムの修正に関与すると考えられる. STGを反復した時には左右PMCと左右SMCの活動が有意に減少した.歩行が自動化されるとSMC活動の減少が見られ(Miyai 2002),新しい歩行パターンの適応学習と小脳の興奮性の変化が関係する(Jayaram 2011)ことから,歩行が自動化すると皮質から皮質下機構へ制御が移動すると考えられる.本研究の結果からは,歩行の自動化に伴い歩行準備状態においても皮質下機構が関与する可能性が示された.【理学療法学研究としての意義】 本研究結果は,歩行パターンを随意的に変化させるためには歩行準備状態のPMC活動を増加させるような介入が必要であることを示唆する.また歩行の反復により歩行準備状態の脳活動が変化する可能性が示された.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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