理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
足底刺激条件の違いが識別課題時脳活動に及ぼす影響
─fMRIによる分析─
多田 裕一松田 雅弘白谷 智子妹尾 淳史新田 收
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キーワード: fMRI, 位置覚, 脳活動
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p. Aa0889

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抄録
【はじめに、目的】 身体意識の生起には、感覚器官を通して外界や身体の内部に関する刺激を受容して情報処理を行う必要がある。その中でも関節位置覚は重要であり、上肢の位置覚課題時の際における脳活動はこれまでに報告されてきた。しかし、足底面への刺激を変化させた条件で足関節の位置覚が脳機能にどのような影響があるのか明らかではない。そこで本研究の目的は、足底刺激の違いが足関節の位置覚を識別する課題時の脳活動に及ぼす影響を機能的MRI(functional MRI;fMRI)で分析することとした。【方法】 対象は健常成人12名(男性8名、女性4名)とし、平均年齢は22.2(20-25)歳であった。課題は他動的に足関節底背屈運動を連続的に実施した。識別課題は足関節20°底屈位を通過した回数を被験者自身に数えてもらうこととした。その際に、足底面への刺激を変化させ、課題Aは突起刺激なし、課題Bは突起刺激ありとして塩化ビニール樹脂製の約2mmの突起を10mm間隔に均等に設置したものを利用した。脳内活動の計測に用いたMRI装置は、フィリップスエレクトニクスジャパンのAchieva3.0TQuasar-dualである。MRIの測定条件は、標準ヘッドコイルを用い、gradient echo(GRE)型echo Planar(EPI)法にて、TR[msec]/TE/FA[deg]=4,000/35/90、FOV230mm、スライス厚5mm、スライス枚数25 枚、マトリックスサイズ128×128の条件で撮影した。全対象者は、MRI装置内で安静背臥位となり裸足、閉眼とした。また、右足部を被検足とした。スキャン時間はtaskおよびrestを各々40秒間とした。課題はそれぞれ3回ずつ繰り返し、課題の間にはrestをとった。なお、課題AとBはランダムにて実施した。解析と統計処理はSPM8を用いて解析を行った。解析はまず位置補正、脳の標準化、平滑化を実施した。その後、集団解析にて被験者全員の脳画像をタライラッハ標準脳の上に重ね合わせた。その上で、1)課題Aとrest、2)課題Bとrest、3)課題AとBのサブトラクションを行い、MR信号強度がuncorrectedで有意水準(pく0.001)をこえる部位を求めた。さらに関心領域は、一次体性感覚野や運動野、補足運動野、二次体性感覚野、前頭前野、角回、縁上回、大脳基底核、小脳とした。【倫理的配慮、説明と同意】 実験に先立ち被験者に内容を文書で説明し同意を得た。本研究は平成22年度首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認を得ている。なお、被験者に有害事象は発生していない。【結果】 課題Aとrest、課題Bとrestのサブトラクションの結果については、左半球の一次体性感覚野と二次体性感覚野、補足運動野が同じように賦活した。ただ、右半球の縁上回が課題Aにてより賦活していた。また、課題Aと課題Bのサブトラクションについては、「突起刺激あり」より「突起刺激なし」が左半球の補足運動野が6ボクセル、右半球の一次体性感覚野が23ボクセル、縁上回が8ボクセルとより有意に賦活していた。【考察】 「突起刺激なし」と「突起刺激あり」の条件にて共通に賦活していた領域については、左半球の一次体性感覚野、二次体性感覚野、補足運動野が賦活していた。先行研究により、補足運動野は運動の企画・初期、一次・二次体性感覚野から入力としての体性感覚応答としての役割が報告されており、本研究での足底への表在感覚入力による影響により賦活したことが示唆された。そして、二次体性感覚野は注意への感度、他動運動に反応としての役割が報告されており、本研究での足関節を他動的に動かし関節角度を識別した影響により賦活したことが示唆された。「突起刺激なし」が「突起刺激あり」の条件よりも賦活していた領域については、右半球の一次体性感覚野と縁上回が賦活していた。右半球は空間的注意に関与しているとの報告がある。縁上回は空間・位置に関する概念と自己の身体イメージが生じるとの報告や運動を誘発するための体性感覚空間の情報処理が行われ、系列運動の空間イメージが産生されるとの報告がある。また、一次体性感覚野は近位よりも遠位の運動が両側性投射をすることが明らかになっており、本研究は足関節にて実施しているため両側性投射をしやすかったのではないかと考えた。これらより、識別する際に右半球の縁上回に情報を効率的に伝達するために感覚情報が両側性投射され、「突起刺激なし」では、感覚情報が少ないために右半球の一次体性感覚野もより賦活しなくてはならず、この領域のネットワークがより活性化した可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 「突起刺激なし」では右半球の縁上回と一次体性感覚野が賦活していた。これは,「突起刺激なし」では「突起刺激あり」と比較して表在感覚の条件が違うため、足関節位置覚を識別する際に脳内のネットワークを活性化することが示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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